地方局のアナウンサーから史上最年少の36歳で福岡市長に就任。
逆風のスタートから、いかにして福岡を「最強」と言われる都市に改革していったのか?

就任から8年、2018年11月の市長選では28万票以上を獲得し、
前回の市長選(2014年)に続いて史上最多得票を更新した。

しかし、そこに至るまでの道のりは、第1回の記事のとおり、決して平坦なものではなかったという。
物事を前に進めるために、リーダーは何をすべきか。そして、何をしてはいけないのかー。

博多駅前道路陥没事故の復旧や、熊本地震の際のSNS活用方法をはじめとした取り組みで注目を集める高島市長は、まさしく福岡市の【経営】者だ。そんな彼の仕事論・人生論が詰まった、初の著書『福岡市を経営する』(ダイヤモンド社)から、その一部を再編集して特別公開する。
<構成:竹村俊助(WORDS)、編集部、著者写真撮影:北嶋幸作>

リーダーである市長が意思決定しないのは最悪の選択だA案とB案がある。どちらにもメリット、デメリットがある。さあどうする?

決断しないことがいちばんの罪

福岡市長・高島宗一郎氏高島宗一郎(たかしま・そういちろう)1974年大分県生まれ。大学卒業後はアナウンサーとして朝の情報番組などを担当。2010年に退社後、36歳で福岡市長選挙に出馬し当選。2014年と2018年いずれも、史上最多得票を更新し再選(2018年11月現在)。熊本地震の際には積極的な支援活動と SNSによる情報発信などが多方面から評価され、博多駅前道路陥没事故では1週間での復旧が国内外から注目された。『福岡市を経営する』が初の著書となる。

 リーダーは決断するのが仕事です。

 そして、その決断はなるべく「早く」行なうことが大切です。

 前回(第6回記事参照)「全員」を意識すると動けなくなるとお伝えしましたが、早く決断するためには、関わる人は少ないほうがいいでしょう。

「船頭多くして船山に上る」ということわざがあるように「あの意見を参考にさせていただきながら……」「この意見も参考にさせていただきながら……」などとやっていると、一向に物事は進みません。

 たとえば、とくに選挙に不安の大きい候補者の中には、「すべての有権者」に迎合し、できもしないことを約束したり、主義主張がまったく異なる人や組織、政党からも支援や推薦を受けたりして戦おうとする人がいます。仮にそうやって支援を広げて圧勝してしまうと、当選後にあらゆる方向に配慮せざるをえず、ジレンマの中で身動きが取れなくなり、結果的に決断できなくなるのです。

 A案とB案がある。どちらにもメリット、デメリットがある。さあどうする、というときに最悪の選択は「すべての支援者」に配慮して「決めない」「動かない」ということです。

 決断しないことがいちばんの罪。決めずにずるずると先延ばしするよりも、なるべく早く決断をすることが大切です。

 そして、その決断によって発生した悪影響をいち早く抑え込むことに力を注ぐべきなのです。変化の時代において、スピードというのはいちばんの付加価値です。そのためにも、やみくもに支援を求め、仲間の数を増やしていくのではなく、政治信念や政策の方向性を同じくする「同志」をひとりでも多く増やすことが重要です。その意味においては、「51対49」というのが、もっともよい勝ち方です。

 福岡市のスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」には多くの都市が視察に来ています。今は日本で最先端の施設ですが、視察に来られた自治体がこれから同じことを始めるでしょう。今は先行者の優位性があるからといって、そのうえに胡坐(あぐら)をかいていれば、一瞬にして他の大都市にその座を持って行かれてしまいます。

 福岡市は今、常に最先端でいようとチャレンジを続けています。先頭を走っているからこそ、東京や大阪のような大都市でないにもかかわらず、存在感を発揮でき、全国の優秀な人材に福岡市のプロジェクトに関わっていただけるのでしょう。

 今持っている先行者の優位性は、少しよそ見をしただけで瞬く間になくなってしまいます。だからこそ「今できること」は、「今やらないといけない」のです。スピードは最大の付加価値。だからこそ、決断はなるべく早く行なうことが重要なのです。

次回は、博多駅前の陥没を最速で復旧した一部始終についてお伝えします。12/20公開予定です)