「増やしたい仕事」と「減らしたい仕事」を明確にする
さらにくわしく、「チームのありたい姿」を見てみましょう。
例に挙げた「(2)IT企業SE部門」では、「もったいないところ」を改善することを重視した内容にしています。「チーム内で自分の役割がわかりづらい」「対話が少ない」「情報共有・効率化が足りず、残業が多い」といった「もったいないところ」を改善するために、「増やすべきこと=対話、情報共有、効率化」と「減らすべきこと=残業」を記述したわけです。
おもしろいのは、「○○君に彼女ができるようにする」という最後の一文です。○○君はメンバーのなかで最も若い独身男性。その○○君のプライベートに関することが、盛り込まれていることに違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この一文に、この「ありたい姿」のよさが凝縮しているとも言えるのです。
このチームは、もともとコミュニケーションが少ないことが課題でした。しかし、「カエル会議」で悩みを共有するなかで「そうか、みんな同じことを思ってたんだね」と共感が生まれ、「それじゃ、仕事以外の話ももっとしよう」とライフの充実についても付箋を出し合うことになりました。
そのときに、あるメンバーが、「残業が多くてデートもできない○○君に彼女ができるくらい、『働き方』が変わるチームになりたい」という付箋を出したのです。「カエル会議」を通じてチームに温かい雰囲気が生まれていたこともあって、○○君も嬉しそうに笑い、他のメンバーも「それ、いいね!」と、おおいに盛り上がりました。
そして、「○○君に彼女ができるようにする」という一文を「あるべき姿」に盛り込むことが全員一致で決定。このような経緯でつくられたからこそ、メンバー全員が「あるべき姿」を大切に扱いました。そして、チームは一歩ずつ「あるべき姿」に近づいていったのです。
一方、「仕事の本来の目的」を明記したのが、「(5)メーカー研究開発部門」のチームです。
注目したいのは「作業の標準化や会議の質を上げるなどで無駄な時間をそぎ落とし、創造・実験活動に多くの時間を割けるようにする」という一文。これは、「作業の標準化が進んでいないこと」「会議の質が低いこと」で時間を取られ、「仕事の本来の目的」である「創造・実験活動」に十分な時間をかけられていない現状を踏まえたものです。
このように、「増やしたい仕事」と「減らしたい仕事」を「ありたい姿」に明記すると、「働き方改革」の明確な指針になるので非常に有効です。
また、このチームでは「残業削減」ではなく、「生産性を上げてチームの価値を最大化する」ことをゴールにしているのもポイントです。くり返し述べているように、「生産性向上」こそが「働き方改革」の本質であり、それを追求する姿勢をメンバーで共有することに大きな意味があるからです。