世界で著書累計100万部の猫を愛する専門家が、猫から日々教えられている生きる知恵を綴った『猫はあきらめ時を知っている』の日本語版が刊行された。
お気に入りの隠れ家を持ち、高価な物より段ボール箱を愛し、美味しくない食事は遠慮なく残し、どうやらこっそり人間をしつけているらしい……そんな猫が、常に周りの目を気にして生きる人間たちに、もっとラクに生きるコツを伝える一冊から一部抜粋して紹介しつつ、無類の愛猫家の翻訳者・吉田裕美氏が猫への思いを綴る。
猫にありがちな日常の仕草には、どんな偉人の名言にも勝る、深い人生哲学が込められている!(以下、執筆/吉田裕美)
車に乗るより、できるだけ歩こう
猫は自らの意思で、車や電車、飛行機で移動することはない。
その代わり、自分の縄張りをゆっくりと
注意深く歩き回る。
それが小さな縄張りであったとしても、
猫はそこを一日に何度も歩いて見て回る。
だから、歩こう!
街じゅうや公園を、仕事の行き帰りや田舎道を、
そして、それらができなくてもせめて
ジムのウォーキング・マシンの上でもいいので 歩こう。
歩くことは、
猫だけでなく人間にとっても、
健康維持に欠かせない大切な営みである。
(セリア・ハドン著 平田光美訳『猫はあきらめ時を知っている』より)
ひとり暮らしの友人の家の庭には、いつの頃からか1匹の雄猫が現れるようになった。
見るからに体格がよく、ボス猫の貫禄を備えている。
ある日、その猫が顔にひどい傷をつくってやってきたので、友人は保護して獣医病院へ連れていった。
獣医師の話では、覇権争いに負けたのではないかという。
友人は、ボスの座を追われた猫を不憫に思い、その日から家の中で飼うことにした。
すると、猫は初めから家猫だったかのように友人になついて、膝に乗ったりベッドで一緒に寝たりしたのだ。
しばらくしたある時、友人は近所に住む妹に世話を頼んで1週間ほど家を空けた。
妹が通い始めて4日目、玄関を開けた途端、そこで待ち構えていたと思しき猫が猛ダッシュで外へと飛び出していってしまった……。