男性はとにかく育休を取ってみるべし!
女性活躍のキーワードは多様性と共感
司会 さて、最後のテーマです。(カードを引いて)「女性活躍の未来」が選ばれました。「育児の負担が重く、会社でも昇進機会が平等ではないように思います。女性が活躍できる社会のイメージとはどのようなものですか」。
田鎖 女性が活躍できる職場にするにはどうしたらいいのかを考えています。たとえば、育児休暇や時短勤務をとりやすくする。ですが、結果として働きやすいかというと必ずしもそうではありません。なぜなら、時短をしても、その人だけ仕事を誰かに預けて早く帰らなければならず、職場の居心地が悪くなってしまう。「結婚して子どもがいたら早く帰れるのか」と、そういう雰囲気になってしまう。
であれば、女性が活躍するためには、女性を主にするのではなくて、女性を意識しない制度設計が必要だと思います。男性も女性も、子どもがいても、いなくても、です。
山崎 私自身は、大企業に勤めたことがないので、そういった苦労を感じたことがありません。もっとも、苦労させるような会社でがんばらなくていいと思います。いま、多様性こそが組織の力の源泉だと思っている会社も結構ありまして、そこに転職するのが1つの手です。
個人的な話になりますが、私の場合、間違って独立と出産が重なってしまいました。その時、夫が4ヵ月の育休をとってくれました。すると面白いことに気がつきました。
最初から2人で育児を始めると、2人とも能力が伸びて、子育ての力に格差が生まれないのです。基本的に、「ママじゃないとダメ」というのは、母乳ぐらいしかないのです。
一緒に経験したので、育児への主体性が高まりました。家族だけでなく、他の人に対しても育児の苦労が想像でき、共感もできるようになりました。
夫としても、仕事をしていない時間が増えたことで、会社を辞めた後、どんな人生を過ごすのだろうかを考えたようです。もちろん、会社に戻ってもまったく問題なく復帰できました。(質問者は)そんなに苦しい思いをしなくていいのではないでしょうか。
多様性のある社会の根底に必要なのが、共感です。共感するのに最もよいのは、同じ経験をするということです。難しいことを考えず、みんなが育休をとってみたら社会が変わるかもしれません。
家族のかたちすら再定義できる!?
つまらなくない子育て/介護を構想する
孫 今日は、「つまらなくない未来」ということなので、別の角度からお話しをします。僕は、女性が活躍するためには、スマートコントラクトを使って、家族関係を再定義したらいいのではないかと思います。この場合の家族というのは法的な関係の意味で話しています。
考えてみますと、昔は、村落で生まれた子どもは村全体の授かり物ということで、村全体で育てる風潮がありました。昔は、「生みの親より育ての親」という言葉もありましたが、近代になって家族関係が規定されると、血縁純血主義になってしまい、いまでは養子縁組すらも難しい状況です。
もっとも、諸外国では、婚外子であっても関係ないですし、シングルマザーがマジョリティーになりつつある。フランスがいい例ですが、法的、経済的な関係が変化すれば、結婚すらしなくなるのです。
実際、結婚制度なんてもういらないでしょう。もう1段上で、新しい概念の「家族」を考えてみたらどうでしょうか。財産分配権や親権などを再定義する。生みの親だけで子育てをする必要もないし、男性が育児をやってもいい。子育てや親の介護を新しい「家族」で行う。そんな世の中になれば、女性活躍がテーマにすらならないでしょう。
スマートコントラクトなので、みんながこれを信じることができれば実現できます。その先には、家族だけでなく、会社組織や学校という枠組みもなくなっているのかもしれませんし、新しい名前がつくのかもしれません。こっちのほうが「つまる」未来だな、と思います。
司会 残念ながらお時間を迎えてしまいました。今回の議論は、グラフィックレコーディングを用いて、デザイナーの小林ランさんによって1つの図にまとめてもらいました。皆さま、長時間ありがとうございました。