人気ドラマ「下町ロケット」に続いて、同じく池井戸潤氏原作の映画『七つの会議』に出演した朝倉あきさん。同作は現代を生きるすべてのビジネスパーソンに「働く事」の正義を問う、企業犯罪エンターテインメント。劇中で彼女が演じているのは都内中堅メーカーの営業職、浜本優衣。5年間、なんとなく働いてきたものの退職を意識したことで初めて自分らしい、やりたい仕事を見つける。役柄を通して、彼女自身が感じた働き甲斐、自分らしい働き方とは? 20~30代の社会人から圧倒的な支持を集めている『転職の思考法』の著者である、北野唯我さんとともに、昭和でも平成でもないいまの時代に合った働き方を考える。(文:高山亜紀/撮影:斉藤美香)

「なんのために働くのか」を振り返るきっかけに

朝倉 映画を観ていただいたそうで、ありがとうございます。

北野 この作品は、いまの日本の縮図だと思いました。日本の悪いところを残した昭和型と平成に生まれたキャラクターの対立構造が一番の面白さではないでしょうか。一見、悪者に見える香川照之さんが演じている部長も決して悪い人ではなくて、昭和の時代では正しかったビジネスをそのまま展開している。けれど平成の時代になって、日本はそこまで成長しなくなり、自由でフラットなミレニアル世代の価値観が押し寄せるなか、朝倉さん演じるキャラクターは、心が殺されてしまう。それでも仕事をしていかなくてはならなくて、どうやって自分なりの働く事の意義を見いだしていくのか。絶望のなかに希望を見いだす。『転職の思考法』が支持された構造と似ているんじゃないかと思いました。

朝倉 私も本、読ませていただきました。同感です。劇中では主役の野村萬斎さん演じる八角がどんなに不遇な目に遭いながらも、決して働くことへの信念を失わずにいるというところが一番、大切なところだと思っています。

北野 以前、ある取材で聞いたのですが、いま日本では左遷が社会問題になっているそうです。すごく頑張ってきた50~60代の人がいきなり左遷される。仕事=人生の人が仕事のやりがいを失い、生きがいまでも失くしてしまう。人口構造を考えるとそういう人たちは増える一方です。どうやって希望を失わないで働けるか。実質的には左遷されておきながら、決して希望を捨てないでいた八角というキャラクターはまさにそういう人たちが参考にすべきかもしれません。

朝倉あき(あさくら・あき)
1991年9月23日、福岡県生まれ。2006年「東宝シンデレラ」オーディションのファイナリストに選出。2008年『歓喜の歌』でスクリーンデビュー。2013年『かぐや姫の物語』ではかぐや姫の声を務めた。第39回モスクワ国際映画祭でW受賞した主演映画『四月の永い夢』は2018年に公開。2019年は映画『七つの会議』(2月1日公開)、『21世紀の女の子』(2月8日公開)に出演。

朝倉 八角は観ている側も辛くなるような目に遭っているんですが、どうにも目が離せないほど、魅力的なんです。それはきっと彼が自分にとって大事なものを見失っていないからではないでしょうか。八角さんだけでなく、香川さんが演じる部長にずっと追い込まれている及川(光博)さん演じる課長もそう。彼らが立ち上がる最後のシーンが印象的ですが、どんなに会社が崩れて、悪い方向に流れていこうとしても、彼らみたいに絶対に大切なことを見失わない人たちがいます。観客の方には、物語の世界と思ってしまわないで、「僕等にもできることがあるはずだ」と気持ちを鼓舞したり、「なんのために働いているのか」ということを振り返る機会になっていただけたらうれしいです。

北野 朝倉さんの演じる浜本は唯一、20代で女性のキーパーソンですが、どのようなことを意識して演じていたのですか。

朝倉 そうですね。本当に個性の強いキャストさんが揃っていて、しかもものすごく濃い思考を持った人たちなので(笑)

北野 確かに。顔も濃いです(笑)。

朝倉 オーラも圧も尋常じゃない、素晴らしい魅力を持った方々ばかりです。そこに負けないように、「この人も面白い」と思ってもらえるようなキャラクターを作りたいと意識しました。20代という年齢は未来のことについて柔軟に考えられる余裕がある時期でもあります。まだまだ、いろんなことに気づける。ものごとを客観的に観て、思ったことをそのまま言える。八角さん同様、保身に走らない本音のキャラクターなので、観ている方に一番、共感してもらえるのではないかと思いました。