2019年4月に罰則つき残業規制がスタートすることもあり、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。

「これが職場の問題点」と指摘するマネジャーが、<br />実はチームを停滞させている!?

要因分析で「大きな問題」を細分化する

「働き方改革」が停滞する意外なパターンがあります。

 それは、とても優秀なプレイングマネジャーがいるチームによく起こります。客観的な現実を正確につかまないままに、マネジャーの主観で「うちの働き方の問題点はこれだ!」「だからこれが解決策だ!」とスピーディーに決定して指示を出すケースです。

 しかし、往々にしてそれは「思いつき」「思い込み」にすぎず、「働き方」をさらに混乱させることになります。チームの「働き方改革」を進めるためには、まずメンバー全員がどの業務にどのくらいの時間をかけているのかを客観的に把握することが必須なのです。

 そして、チームの「働き方」を最も簡単に把握するツールが、「朝夜メール」(連載第20回参照)です。メンバー全員に、始業時に一日の予定、終業時に実際の業務内容を記録してもらい、メールでチーム内で共有するという、一日5~10分で完了する非常にシンプルなものです。

 この「朝夜メール」を2週間から2ヵ月程度続けると、集計・分析に必要な情報がある程度集まりますから、下図のようにチーム全体の「働き方」を可視化して、「カエル会議」で共有するようにしましょう。

朝夜メール分析・集計

 そして、チーム全員でディスカッションをしながら、「現状把握」→「問題点の発見」→「原因の特定」→「解決策」を決定したうえで、「解決策」をチームで実行。一定期間後、その結果を再度集計・分析して、再び「現状把握」→「問題点の発見」→「原因の特定」→「解決策の実行」というサイクルをグルグル回していくことで、チームの「働き方」を最適化していきます。

 ここで重要なのは「原因の特定」です。
 たとえば、営業部なのに営業に割いている時間が10%以下ならば、「営業時間が少ない」という「問題点」を容易に見出すことができますが、「営業時間が少ない」といった「大きな問題」に対する解決策を具体的に考えるのは難しいものです。

 そこで、下図のように、「なぜ?」を2回ほど繰り返すことで、「大きな問題」の要因分析をする必要があります。たとえば「営業時間が少ない」という「大きな問題」が発生する原因を、「なぜ?」を2回ほど繰り返して深掘りしていくわけです。このプロセスを通じて、「大きな問題」を「小さな問題」に小分けしていくと言ってもいいでしょう。

課題の細分化

「なぜ、営業時間が少ないのか?」という意識をもって「朝夜メール」の分析結果を見ると、「資料作成に多くの時間が取られている」ことに気づくかもしれません。さらに、「なぜ、資料作成に時間を取られているのか?」という意識をもって分析結果を見ると、特に「営業資料の作成」に多くの時間が取られていることがわかるかもしれません。

 このくらいまで問題を小分けにできれば、メンバーで「営業資料」に割く時間を減らす具体的な解決策について、ディスカッションすることができるようになります。「どうすれば、営業資料に割く時間を減らすことができるか?」というテーマについて、全員に付箋を配ってアイデアを書いてもらい、グルーピングしていけば、「営業資料のひな型を共有する」「各メンバーの作成資料を会議で共有する」などの解決策を導き出すことができるでしょう(会議の仕方は連載第16回参照)。