2019年4月に罰則つき残業規制がスタートすることもあり、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。

「働き方改革」は、失敗しようがないほど“小さなこと”から始めるのが正解

「働き方改革」のモチベーションを下げる理由

 職場の「働き方改革」を進めるためには、その大前提として、メンバーがどのような業務にどのくらいの時間をかけているかを客観的に把握する必要があります。そのうえで、メンバー全員で「問題点」「その原因」「解決策」を出し切ってみることをおすすめします(連載第25回参照)。そして、そのすべてを一覧表にするなどして整理して、「どの解決策から実行するか?」をメンバー全員で話し合います。

 このときマネジャーが「まずこれに着手しよう」と押しつければ、メンバーのモチベーションは下がってしまうので、メンバーの意向を尊重することが大切です。

 ただし、ひとつだけ注意しなければならないことがあります。「働き方改革」は、すぐに実行可能な「小さなこと」=「難易度の低い解決策」から着手するのが鉄則だということです。

 いきなり「大きなこと」=「難易度の高い解決策」にチャレンジしようとしても、すぐに結果を出すのは難しいもの。効果も実感しづらく、「やっぱり、変えられないんだ」と、メンバーのモチベーションを下げる結果を招いてしまいます。

 一方、「小さなこと」を解決することで、「大きな効果」を生み出すケースはたくさんあります。すぐに着手でき、すぐに結果も出ますから、メンバーは「自分たちは変化を生み出せるんだ」と実感できます。これが、「働き方改革」へのモチベーションをグッと高め、成功に導くカギとなるのです。

 ですから、メンバーが「システム導入」のように「大きなこと」から着手したいと言い出したときには、決して全否定せず「それもいいね」と受け止めながら、やんわり押し戻す工夫をしたほうがいいでしょう。

「それって予算はどのくらい必要かな?」「時間はどのくらいかかるんだろう?」「ほかにも解決策があったけど、すぐにアクションできるものはないかな?」「すぐに成果が出たらモチベーションが上がりそうだね?」といった声かけをします。そして、「システムを導入したら万事解決」というメンバーの思考が、「自分たちで解決できることはないか?」という思考に切り替わるようにうながすのです。