ここで、トヨタの社員なら誰でも口にする「『なぜ?』を5回」の問題解決ルールが首をもたげてくる。
これは、「起きた現象に対して最低5回は『なぜ?』を繰り返し、現象を引き起こしている真の原因を突き止めよ」というルール(原則)である。
一つの現象には、それを引き起こす原因が幾重にも重なっていることが少なくない。何が真の原因(真因)なのか、その現象が再び起きないようにするにはどの原因を取り除けばよいのか。この答えを得るには、「なぜこの現象が起きたのか」を最低でも5回は掘り下げていかないと、真因には行き着かないというわけだ。
5回の「なぜ?」の実践プロセス
どのように行うのか?
「なぜ?」を5回繰り返す例を先のコンベヤー停止に当てはめてみよう。
コンベヤーに部品が引っ掛かったのはなぜか。これが1回目の「なぜ?」で、担当者は目の前のコンベヤーを仔細にチェックすることによって、コンベヤー上にある微妙な凸凹を発見する。この原因を除去するだけだったら、なんらかの方法で凸凹を取り去ってコンベヤーを滑らかにするだけで事足りる。
しかし、これでは真の問題解決にならないことは前述の通り。5回の「なぜ?」の原則が身についている担当者は、ごく自然に2回目の「なぜ?」に入る。
コンベヤーのわずかな凸凹はなぜ生じたのか。凸凹ができたのはこのラインだけなのか、隣のラインにも同じような現象は起きていないか、などを調べる。
その結果、他のラインでも同じような現象が起きていたのなら、コンベヤーに問題があると推測できる。そこで、コンベヤーの製造工程を検証する。これが3回目の「なぜ?」になる。
検証してみると、コンベヤーを構成する一部の部材が温度変化に弱く、ゆがみやすいものだったことが判明する。そこで、コンベヤーの設計者はなぜこの部材を使ったのかと、4回目の「なぜ?」に入る。