トヨタ生産方式を形だけ導入しようとしても成功しない。うまく機能させるには、カイゼン哲学を共有し、不断の努力を続けなければならない。そして、その背景には、トヨタに脈々と受け継がれる労使間、社員間の徹底した対話文化がある。トヨタ労組の書記長や自動車総連の会長などの要職を長年務め、『トヨタの話し合い』を上梓した加藤裕治弁護士に、トヨタの現場の情熱や創意工夫の秘密を聞く。

トヨタの上司は指示ではなく、一緒に考える

指示待ち人間では
会社は成長しない

 今日の会社の中に、「全員納得」を目指して、とことん議論するような場は、いったい、どれだけあるのだろうか。

 忙しいビジネスパーソンはとにかく結論を急ぐから、“とことん議論”などという場面はほとんどないかもしれない。

 とことん議論どころか、メールに頼り、フェイス・トゥ・フェイスの話し合いをする機会すらない会社が少なくないと思う。

 そういう環境の中で働くビジネスパーソンは、指示待ち人間に陥ることが少なくない。上司のほうも、部下の納得など気にせず、指示・命令だけで仕事を割り振りする向きが多くなってきている。お互いにそのほうが楽といえば楽なのだ。

 しかし、これは非常に危険な傾向である。