「囲い込み」を隠す巧妙な手口

 最近は巧妙になってきていて、噓の返答をすると、「囲い込み」が明るみに出たときのリスクがありますので、「まだ物件はありますが、売主様のご都合が悪く今週の土日は内見ができません、また来週以降でお願いします」などと言って、来週以降に連絡すると、また、「今週も売主様のご都合が悪く、また次の週も……」と引き延ばすのです。

 この状況は、機会を喪失させられている売主はもちろん、買いたくても買えない買主も本当に気の毒です。

 そうした事情をまったく知らない売主は、なかなか内見希望者が現れないことで、だんだん弱気になります。

 数週間から数ヵ月以上もそのままの状態が続き、この状態を業者の間では「干す」と言います。売主の弱気度がかなり増してきた頃に、業者からそろそろ価格を下げたほうがよいと提案があったりします。

価格交渉により、大幅値下げに……

 この段階では、売主は「自分の物件に世の中の人たちがまったく興味を持ってくれない」と落ち込んでいることが多いので、おおむね価格を下げることに同意します。

 ここでB社は、当初の価格よりは下げますが、サイト上では本来の価値である4000万円より少し高いくらいにすることを提案します。同時に、売主にはさらにどのくらいまで下げることができるかを確認しておき、自分の顧客に「サイト上の価格より下がる可能性があります!」と連絡し、購入をすすめます。

 売主と買主、両方から手数料を得るためです。

 もちろん、これで決まることもあります。しかし最初に「新物件」として登場した、いわば新鮮な時期に売り損ねてしまうと、「売れ残っている物件」という印象ができてしまいます。「こんなに長い間決まらないのは何かあるのではないか?」などと思われるわけです。結果的に、物件価格が本来の価値よりも下がってしまうこともあります。

 この段階に入ると、売主も正常な判断ができなくなってしまうことがあり、価格交渉に対し、「値引き幅が大きくても、せっかく申し込んでくれたのだから」と、希望通りに応じてしまい、結果的に本来の適正価格より1割以上も低くなることもあります。

 最初から4000万円、または少し高いくらいで販売していたら、すぐに決まっていたかもしれません。