自信をつければ点数は上がる
入塾時、特に父親から塾へのリクエストで多いのが「ウチの子にはたくさん課題を出してがっつり鍛えてやってほしい」という内容だ。ただ富永氏からみると、そのアプローチでは潰れてしまう子が結構いるという。
「保護者の方は学力の絶対値を上げる事ばかり意識してしまっていて、子どもたちが入試本番で何パーセントのパフォーマンスが出せるかというところに思いが至っていません。僕らの仕事は、学力そのものを上げることに加えて、持っている力を出し切れる力をつけてあげることです。
点数は声のかけ方ひとつで上がります。例えばお子さんが、難易度が5段階のうち、3段階まで解けたとします。親としては、4と5がまだできていないじゃないかとつい言ってしまうのですが、僕らは3までできたことをものすごく褒めます。同じ現象でも、その評価次第でその後の伸びが全然違ってくるのです。特に女の子は経験上、8割ほめて2割しかるくらいがちょうどいい。もちろん、同じアプローチをとったら気が抜けてサボることが多い男の子には『これで満足してる場合じゃないよね。4も5もやってみようぜ』と発破をかけないといけませんが、小学生は大人ほど気持ちのコントロールが上手にできない分、少し持ち上げて自信を持たせてやるだけで、点数は意外と簡単に上がるものです」
自信→やる気が出る→点数アップ→自信…というスパイラルができると、子どもは自分から進んで勉強し始める。
VAMOSの生徒は、入試が終わった翌日から、ほとんどの子が自主的に塾に通い続けるという。これは“自信”と“やる気”のスパイラルで「学習習慣」を身につけてしまったから、と富永氏は見る。
「受験勉強の目的は、与えられたことを言われた通りにこなすマニュアル人間を量産することではありません。ただ現実は、あの東大でさえ塾が攻略法をつくってしまい、自分で方法論を考える必要がなくなってきています。でも、自分で自分に足りないものに気づき、自分の力で努力や工夫をして獲得していける人間を育てることが大切ではないでしょうか。これが社会をたくましく生き抜く、一生ものの生きる力となるからです。
僕らの指導を通じて、生徒たちにその思いが伝わっているからこそ、合格をゴールにせず、学び続けることが苦にならない。むしろ彼らはすでに、自分なりに楽しんで学ぶ方法を知っているのかもしれません」
子どもが自立的に勉強に取り組む環境を作りだすことに定評のあるVAMOS。このような教育への考え方は、塾だけではなく家庭内の教育にも活かせそうだ。
全3回でお届けする富永氏へのインタビュー企画。第2弾では「中学受験のトレンド」(3/23公開予定)について、第3弾では「ご家庭での指導方法」(3/24公開予定)について詳しく伺っていく。