「緩和なくして成長なし」
量的緩和から脱せぬ中央銀行

 今回の決定は中央銀行のバランスシート縮小、いわゆる「出口戦略」の難しさをも物語っている。15年12月の利上げ決定を皮切りに日米欧の先進国で唯一、バランスシート(BS)の縮小を進めてきたFRBが、ここにきて早期停止に追い込まれてしまった。米国は失業率が歴史的な低水準にあり、成長の勢いがさほど衰えたわけではないにもかかわらず、だ。

 金融危機後の量的金融緩和を受け、FRBのBSは危機前の5倍程度となる4.5兆ドル規模にまで膨張。その後、17年10月から、保有する国債やMBS(住宅ローン担保証券)の再投資をせず、バランスシート縮小を開始したが、今年9月に縮小を終えるとまだ3兆5000億ドル前後の資産が残る見込みである。今後、再び利上げを継続できる公算は小さいだけに、さらなるバランスシートの縮小は望みにくい。むしろ、景気後退期に利下げで支え切れなければ、BSは再び拡大する懸念すらある。

 出口戦略のトップランナーを走ってきたFRBでさえこのありさま。ECB(欧州中央銀行)や日本銀行は言うに及ばない。量的緩和によるカネ余りに慣れきってしまったがゆえに、引き締めが進んでマネーが縮小すると、年末年始の株価急落のように市場は動揺する。金融市場の不安定化は投資家心理の悪化、逆資産効果を通じて経済を冷え込ませる要因にもなる。

 このように、もはや先進国は中銀の「緩和マネー」なくして、望ましい水準の経済成長を持続できなくなりつつあるのではないか。今回のFOMCは、いわば世界経済が量的緩和という名の“麻薬”から抜け出せない新たな時代に入ってしまったことの象徴として後に記憶されるかもしれない。