これから大きく変化していくこの世の中において、従来の仕事はAI(人工知能)やロボットに代替されていく可能性があります。世界は今まさにイギリスで起きた産業革命、そしてインターネット革命以来の産業構造の大きな変革が起きようとしています。
そんな中、子どもたちが素晴らしい未来を切り開いていくためにはどうすればよいのか? 大人になってからの必須の力として世界的に注目されている「創造力」や「コミュニケーション力」、「セルフコントロール力」などの非認知スキルを、子どものころから磨くためにはどうしたらいいのでしょうか?
ダイヤモンド社から『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』を上梓した脳科学者の西剛志さんが、最先端の研究から分かってきた驚くべき事実を紹介していきます。

子どものメンタルを強くする<br />方法を教えてください

幼少期の記憶を定着させると
幸福度と自信が高まる

子どものメンタルを強くする<br />方法を教えてください西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問
1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、(一財)知的財産研究所に入所。2003年に特許庁に入庁。大学院非常勤講師を兼任しながら、遺伝子や脳内物質など最先端の仕事を手掛ける。その後、自身の夢を叶えてきたプロセスが心理学と脳科学の原理に基づくことに気づき、2008年に世界的にうまくいく人達の脳科学的なノウハウを企業や個人向けに提供する会社を設立。現在は脳科学を生かした子育ての研究も行い、大人から子どもまで、才能を伸ばす個人向けサービスから、幼稚園・保育所の先生/保育士/保護者向けの講演会、分析サービスなどで7000名以上をサポート。横浜を拠点として、全国に活動を広げている。

 メンタルを強くする方法は、子どもへのほめ方の工夫や運動やスポーツをさせることなど、様々な方法があります。その中でも近年、子どものメンタル(困難を乗り越える力)を強化するための意外な秘密が分かってきています。

 それが『日々の出来事を思い出せる子どもほど、メンタルが強くなり、問題解決能力に優れている子が多い』ということです。
この現象はもともと『6~8歳になるまでに3歳以前の記憶がなくなってしまう現象』(専門用語で『幼少期の記憶健忘』)の研究から分かってきました。幼少期の記憶というのはすぐに忘れてしまうのが一般的ですが、よく思い出せる人ほど、幸福度も高く自信があるというのです。

 ニューハンプシャー大学が10~15歳の83人の子ども達を対象に行った研究でも、より具体的な出来事を思い出せる子ども達のほうが、社会問題に関して解決能力が高いことが分かってきています。

 自分がどのような人間かというイメージ(セルフイメージまたはアイデンティティ)は、過去にどんな出来事を体験したかという記憶で形成されています。例えば、楽しかった体験が複数あってそれを詳細に覚えている人は、日々の幸福度も高まり人生はうまくいっているという感覚を持ちやすくなります。怪我をしてもそれを乗り越えた経験をよく覚えている人は「自分が困難を乗り越えられる人」と脳が認識しやすくなります。

 自信のある人についての研究でも、自信がある人ほどマイナスな出来事が起きたときに、過去の自分のプラスの記憶を思い出そうとする傾向が分かってきています。子どもが初めて水に触ったときのことや、動物園に行ったこと、幼稚園に登園したときのこと、がんばってブロックを積み上げたことなどを、親が子どもに思い出させてあげることで、記憶をしっかり定着させることが大切になってきます。

 実際の研究でも、ある出来事を体験した後に子どもに「いつ」「誰が」「どこで」「何を」と質問して体験を親が思い出させてあげると、子どもの記憶が定着しやすくなることが分かってきています。

参考記事

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