この苦しみ、いつまで続く?と思う時
「今日一日だけ」を思い浮かべてみる

――最後に一言、会場にいらっしゃる皆さんにメッセージを頂ければ。

村木 私が拘留中に読んだ本の中で、すごい助けになった言葉があるので紹介します。「一日一生」っていう、酒井雄哉さんっていうお坊さんの言葉。「人間は朝生まれて夜死ぬ。毎日毎日、身の丈の合ったことをクルクル繰り返すんでいいんだ」と。いつまで続くか分からない拘留で、「いつまでこの苦しみが続くの?」と思ったときに、すごく苦しかったんだけど、その本を読んで、「あ、今日一日だけ頑張ればいい」っていうふうに、頭が切り替えられたので、すごく楽になりました。あんまり先のことを考えるとすごく苦しくなるっていうときは、「今日だけ頑張ろう」っていうふうにすると、すごくいいかなと思います。

鈴木 私も伊集院静さんの「人はそれぞれ事情を抱えながら平然と生きている」という言葉を病床で読んで、すごく励まされました。私、がんになるまでは結構自分は「無敵だ」と思っていたんです。何でも努力すればできるようになるし、好きな仕事にも就けたしと。本当にどうにもならないことがあるなぁっていうふうに教えてくれたのががんだった。ふと周りを見渡してみれば、以前の私ならみんな平然と幸せそうに生きているように見えていたかもしれない人でも、みんな一生懸命それぞれが幸せであろうとする中で、いろいろなことにぶち当たって生きているっていうふうに思えるようになって。そう思うと、なんか全ての人が愛おしく思えて、どんな人の行動にも、「あ、その裏には、もしかしたら、何か本当に事情があるかもしれない」と思うようになったんです。
 そうやってみんなが少しずつ優しくなると、この社会は優しくなるんじゃないかなと。だから自分が辛いときもそうだし、自分が元気なときも、伊集院さんのこの言葉を思い浮かべると、いろんなことが許せるんじゃないかなと思って、今でも大切にしている言葉です。

 あと、私は『もしすべてのことに意味があるなら』っていう本を出したんですけれども、「すべてのことに意味がある」って思いたくてもやっぱり、「これって、できれば避けたいよな」っていう現実はありますよね。病気や困難な出来事が。シェリル・サンドバーグさんの話で言うと、その出来事に遭遇しない自分、「オプションA」の自分はもういないとわかったときに、オプションBの「次善の策」を考えることも大事かなって。「その自分で生きていかなきゃいけない自分」も含めて、やっぱり意味があることなんだと、時間をかけてでも受け入れていく。そうすることで、すごく楽になるんじゃないかなと。前に進めない日々も含めて愛おしいと感じられるようになってくるし、原動力になる力が湧いてきたり、やれることが見つかったり、助けてくれる周りの人との出会いにも繋がったり。人生って、そうやって広がっていくのかなと思っています。