自分の存在を会社に依存しているのが「会社のプロ」

「会社のプロ」は、その名の通り、入社した「その会社のプロ」です。

 入社したならば、定年まで勤め上げよう、その会社でやり切ろうと努力し、「会社のプロ」としてうまく順応しながら仕事をしていきます。

 数年ごとの異動で様々な部署を経験。それに伴う仕事内容の変化にも適応し、部下を率いて、組織をまとめ、そして役職を身にまといながら、社内の出世レースを勝ち抜いていきます。

 長らく勤めている人は、会社の変遷を間近で見続けていますから、自分の会社のことならだいたいを理解しています。目に見えるルールはもちろん、目に見えないルールも含めて、風の流れ、潮の満ち引きまで、社内のあらゆることにアンテナが立っています。

「どんな仕事をしているのですか?」と聞かれて、「〇〇社で部長をしています」と、社名や部署名、役職名を答える人は、まさに会社のプロを象徴しています。

 仕事に依存しているのではなく、会社に依存し、「その会社のプロ」になっている状態です。

 一方、「仕事のプロ」は、その名の通り、担当している「その仕事のプロ」です。

 広報なら「広報のプロ」、マーケティングなら「マーケティングのプロ」で、かつ、「広報なら、あの人に頼めば間違いない」と、その仕事をしようと思ったときに真っ先に思い浮かぶ人になる、ということです。

 ただし、これは、「会社のプロ」に比べると、分かりにくい存在です。

 医師や弁護士のように、「資格」という分かりやすいカタチになっていれば別ですが、「広報」や「マーケティング」の仕事に資格は要りません。

 あくまでも得意か不得意か、経験や土地勘があるかどうかが基準であり、それぞれの人が持つ「印象」の話だったりもします。

 では、「会社のプロ」と「仕事のプロ」のどちらがいいのでしょうか?

 この答えは、その本人に合っていればどちらでも良いのではないかと思います。

 ただ、世の中の流れからすると、「これまでは会社のプロ、これからは仕事のプロ」だと言えます。

 その理由は、冒頭に申し上げた通り、今、我が国では「人口減少」と「超高齢化」が「同時」に起きているからです。

 右肩上がりの経済で、労働人口が伸びていく時代は、会社のために尽くすことが良かった。

 でもそれが、通用しなくなってきているのです。

「じゃあ、どうする?」が問われているのが、今という時代なのです。

守屋 実(もりや・みのる)
1969年生まれ。明治学院大学卒。1992年にミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、エムアウトをミスミ創業オーナーの田口弘氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施。2010年に守屋実事務所を設立。設立前および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。自ら投資を実行、役員に就任、事業責任を負うスタイルを基本とする。2018年4月に介護業界に特化したマッチングプラットホームのブティックスを、5月に印刷・物流・広告のシェアリングプラットホームのラクスルを2社連続で上場に導く。