子どものモチベーションを上げるも下げるも、周りの大人次第
佐々木 ああちゃんのエピソードはもちろんだけど、さやかさんのエピソードでも、心に残る言葉が多く登場していました。「自分はこれをやるという、揺るがない意思がないと、前に進むことはできない」「逆に、やりたくもないのに、楽しくもない、達成感もないのに、いやいややらせるなんて、地獄だ」とかね。あと、「慶應を目指した理由は、『櫻井翔君もいるし、イケメンが多そうだな』『楽しそうだから、私も行くわ』それでいい」と。
普通、慶應を目指す理由として大人が求めがちなのは、「将来起業をしたいから、世界の貧困をなくそうと思っているから、それを実現するために慶應に行きたい」なんていう答えなんだろうけれど、それだと途中でプツンと糸が切れてしまう恐れがある。「イケメンと付き合いたい」とか「翔君に会えるかも」みたいな、そういう感情にこそ実はパワーが…。
小林 あるんですよね~(笑)。
佐々木 東大に入った友達の話もよかったです。数学がすごく得意になった理由が、「前の席に座っているかわいい女子が、わからないところがあると振り向いて聞いてくれるから、そのとき完璧に答えられるように予習・復習をしていた」というやつ。それで全国1位になったという。
小林 「とにかく女の子としゃべりたくてしょうがなかった」って言っていましたね(笑)。
ちょっとしたきっかけなんですよね。私も、坪田先生に出会っていなかったら「櫻井翔君が行っている大学に行きたいな」と本気では思えなかった。でも坪田先生が「え、じゃあ行ったらいいじゃん」と言ってくれたから、「え、行ってもいいんだ」って思えたんです。
こういう「“好き”を目標につなげられる子」が私の周りには結構いました。私も、慶應には櫻井翔君みたいな人がいっぱいいるかもと思ったら、漠然とだけれど、キラキラの世界が想像できた。
でも、それを実現できるかどうかは本人の意思よりも、「ある程度の自己肯定感」が必要だと思っていて。自己肯定感がないと、ビジョンを描ける力もないんですよね。私はその点、母親が地道に私の自己肯定感を育んでくれたので、「私の人生、絶対楽しくなるはずだ」という想像力と自信だけはあったんです。そこに坪田先生が現れて、きっかけを作ってくれたから、バーンと爆発した(笑)。
佐々木 確かに。
小林 なので、子どものモチベーションを上げるも下げるも、周りの大人次第なんじゃないかと思っているんです。学生に読んでほしいと思って書いた本ですけれど、本当は周りの大人にも読んでほしい。本人の能力や性格だけではなかなか難しい部分もあって、本人の「ワクワクの種」だけでなく、大人が「フカフカの栄養満点な土」を用意しないと子どもの能力はなかなか伸びない。どちらかでも欠けていると、「自分も頑張りたい、そこに上ってみたい」とは思えないって、自分の経験からも思うんです。
佐々木 さやかさんの場合、フカフカの土をお母さんが用意してくれた。でもワクワクの種を発芽させるには水がいるから、きっかけをつくる「水」の役割を坪田先生が担ってくれたのかな。
小林 そうだ、水も要りますね。坪田先生は化学肥料の役割もあるかな、私の中で化学変化を起こしてくれたから(笑)。
佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
上智大学大学院を卒業後、97年大手広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。カンヌ国際クリエイティブアワードでゴールド賞他計6つ獲得、など国内外55のアワードを入賞受賞。福岡県クリエイティブディレクター、シェラトンJAPANクリエイティブディレクター、などブランディング、広告CM制作多数twitter:@keiichisasaki Facebook:www.facebook.com/k1countryfree HP: www.ugokasu.co.jp