世界中で大ブームの「バレットジャーナル」。ADD(注意欠陥障害)で苦しんできた発案者のライダー・キャロル氏が、自身の悩みを克服するために試行錯誤して生み出した画期的なノート術だ。なぜ世界中の人が、このノート術に見せられるのか、なぜ使う人の「人生を変える」ほどの威力を持つのか?
 発案者のライダー・キャロル氏が書き下ろした初の公式ガイド本『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』の刊行を記念して、キャロル氏が初来日。4月に出版記念トークイベントが開催された。本記事では、イベントに登壇した文具ソムリエールの菅未里氏が、キャロル氏本人が考えるバレットジャーナルの魅力や使い方について語る。

バレットジャーナル発案者が教える生活をシンプルにするために最も大切なこと出版記念トークイベントの様子。会場:銀座 伊東屋 HandShake Lounge

生活をシンプルにするためのバレットジャーナル

バレットジャーナル発案者が教える生活をシンプルにするために最も大切なこと菅 未里(かん・みさと)
文具ソムリエール
大学卒業後、文具好きが高じて雑貨店に就職し文房具売り場担当となる。現在は、商品企画、売場企画、文房具の紹介、コラム執筆、企業コンサルティングなどの活動を行っている。

 近年注目されているノート術「バレットジャーナル」の発案者であるライダー・キャロル氏と私との対談は、4月に銀座の伊東屋で行われた。

 中国で行われたトークショーでは1000人の席があっという間に埋めたキャロル氏だけあり、伊東屋の会場も満員であった。壇上には私とキャロル氏、そして通訳の方が上がった。シャイな印象のキャロル氏は、最初は緊張していたかもしれないが、徐々にリラックスしていったようだった。

 私は登壇前から、キャロル氏に聞きたかったことがあった。それは、本来は生活の面倒さを克服するために考案されたバレットジャーナルに、日本では華やかなイメージがついてしまったことをどう思っているか、だ。

 著書『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』にも書かれており、対談の冒頭でも自ら語ったように、キャロル氏は注意欠陥障害(ADD)を持っており、そのことはバレットジャーナル開発の動機でもあった。

 生活をシンプルにしたくてバレットジャーナルを考案したのに、人々がノート作りに凝るあまり、バレットジャーナルが面倒な方法だと思われてしまっては本末転倒である。彼は「私が人生で抱えていた課題を、ペンと紙で解決するための方法がバレットジャーナルだったのです」と言った。

バレットジャーナルは難しくない
――実践するために最も大切なこととは?

バレットジャーナル発案者が教える生活をシンプルにするために最も大切なことライダー・キャロル(Ryder Carroll)
バレットジャーナルの発案者。デジタルプロダクト・デザイナー
ニューヨークのデザイン会社でアプリやゲームなどのデジタルコンテンツの開発に携わり、これまでアディダスやアメリカン・エキスプレス、タルボットなどのデザインに関わる。バレットジャーナルは、デジタル世代のための人生を変えるアナログ・メソッドとして注目を集め、多くのメディアで紹介。またたく間に世界的なブームとなる。

 キャロル氏の課題とは、言うまでもなくADDによる注意の欠如である。それを乗り越えるために発明したバレットジャーナルが難しいものであるはずはなく、ルールは最小限のはずだ。

 だから、私は聞いてみた。日本ではバレットジャーナルに難しいイメージを持っている人がいますが、簡単に始めるにはどうすれば?

 彼はこう答えた。そもそもシンプルに行えるようにデザインしたノート術なので、ルールは最低限でいい。美しいノートを作ることに問題があるわけではないが、もっと大切なのは「なぜバレットジャーナルをするのか」ということ。自分の課題を忘れないでほしい、と。

 細かい決まりは自由にカスタムしていいし、バレットジャーナル自体も利用者たちの声によってアップデートし続けているとも言った。

 ルールを守ることや綺麗な紙面を作ることよりも、情報を整理するという目的を忘れないでほしい、ということだ。