みんなが易しい目標を作って、会社を潰す

 人事評価を恐怖心に働きかけるマネジメントの仕組みと捉えている人たちは、目標設定でも消極的な態度を取ります。
  できるだけ達成しやすい目標で、達成度を稼ごうとするのです。

 そうと見破られないように、易しい目標を難しく見せる技術も覚えます。営業は隠し玉を用意するし、間接部門は目標の難易度の誇張合戦を展開します。

 これはもう、みんなが易しい目標を作って会社を潰しかねない状態です。

 もしも、そんな状態が続くなら、働く人の心は荒廃し、確実に会社は衰退に向かうにちがいありません。

目標管理が受けるとばっちり

 働く人々は、恐怖心を煽るような人事評価には嫌悪感を抱いています。

 易しい目標を難しく見せる技術にたけた人が得をして、本当の困難にチャレンジした人が割を食うようなデジタル評価システムにも、うんざり感を抱いています。

 こうした嫌われ者の人事評価と、目標管理とが混同され、いつの間にか誤解が独り歩きを始めています。

 本当の目標管理はマネジメント(働く人に力を存分に発揮してもらうため)の仕組みであり、賃金格差をつけるための仕組みなどでは断じてありません。

 それなのに、「両者は同じもの」という風潮が蔓延して、目標管理までもが嫌われ者になってしまっているのです。

 では、本当の目標管理とはどういうものなのでしょうか。

 次回は、ピーター・ドラッカーが提唱した本当の目標管理、「MBO-S(Management by Objectives and Self-Control/マネジメント バイ オブジェクティブズ アンド セルフ・コントロール)」とはなにかについて、お話ししたいと思います。 


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目標管理は、なぜ嫌われるのか?

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