成果主義デジタル評価という妙案
それにしても、なぜ、このような誤解が蔓延しているのでしょうか。
それは、日本の企業のグローバル化と無縁ではありません。
事業のグローバル展開に伴って、日本人以外の従業員も増えています。
彼らは序列づけや評価の根拠をはっきりさせることを要求します。
その要求に応えなければ、優秀な人材は社から去っていってしまうでしょう。
そんな状況下で経営トップは、「明確な根拠のある、公正な人事評価制度を作ってくれ!」と人事部に要請しました。
これは難しい問題です。
クロネコヤマトの創始者である小倉昌男氏(2005年没)も、「私が、42年に及ぶヤマト運輸の勤務のなかで、つくらねばならないと思いながら完成し得なかったものがある。人事考課の制度である」(『小倉昌男 経営学』/小倉昌男/日経BP社/1999年)と述べているように、そんなものは簡単に作れません。
そう思いつつも、なんとかせねばと人事部が頭を悩みに悩ませた結果生まれたのが、「人事評価の代用システムとして、目標管理(MBO-S)を利用する」という妙案でした。
「期初目標の難易度×期末の達成度=仕事の成果」という公式で、貢献ポイントをはじき出す。
期初目標は上司と部下とが納得設定したものであり、期末の達成度は動かし難い事実である。
だから、両者の掛け算で得られた得点は、納得性と客観性を担保する。
これを使えば、誰も文句のつけようのない客観的、かつ納得度の高い人事評価が可能になる。
これがいわゆる「成果主義デジタル評価システム」であり、目標管理と人事評価とを強引に結合させることによって生まれたものです。