実際、白鵬関自身もすぐに断食を受け入れたわけではなかった。しかし私は、力士こそ断食で得られる効果は高いと確信していた。常に増量を強いられるがゆえに、無理にでも食事を摂り続けている力士の体には、間違いなく大きな負担がかかっている。そのせいで病気や故障につながったり、選手生命を短くしたりしている。そんな中で断食をおこない、全身の細胞を若返らせれば、パフォーマンスも向上するはずだ。こうした話を白鵬関に伝えると、「細胞を若返らせる」ことの意味が感覚的に理解できたのだろう、ついに断食の実践へと踏み切ったのである。

 白鵬関は3日間の断食をおこなったほか、滝行をしたり、「穀菜食」(穀物や野菜など植物性食品を中心とした食事)を徹底したりした。こうした取り組みの成果が、2017年の夏場所で1年ぶりの優勝を飾るという最高の形であらわれたのだ。体は見るからに若返り、土俵での動きも見違えるように軽快。パワーもほかの力士にまったく負けていなかった。ウエイト重視の大相撲の世界であっても、断食を行えば若返ってパワーが増すという事実を、白鵬関が身をもって証明したわけだ。

 彼はその後も、場所の合間に何度も断食を行っている。有形無形の手ごたえを、本人自身が実感しているからにほかならない。「食べるが勝ち」という角界の常識に見事なうっちゃりを決めた彼には、さらなる活躍を期待するばかりである。

ダイエットやデトックスだけじゃない「断食」の意外な効果

「断食」と聞くと、ほとんどの人はダイエット効果やデトックス(解毒)効果を思い浮かべるだろう。もちろんその効果もある。しかし実は、それ以上に断食には人生を変える秘密が隠されているのだ。

 それが、断食の脳への効果である。断食を経験した人は皆、頭が冴える、記憶力や理解力が高まる、物事に動じなくなる、体がしなやかに動かせるようになる、疲れにくくなる、といった変化を実感する。ひとことでいうと、脳の仕事力が飛躍的にアップするのだ。これが「断食力」である。

 断食が必要なのは、先の白鵬関のようなアスリートに限った話ではない。自分の「脳力」を呼び覚ますということは、学業や仕事といった場面で、成果を出せることにつながる。つまり、断食は人間のあらゆる活動において、成功のカギを握っているのである。