イトーヨーカ堂を苦境に追い込んでいるのは、同業他社の攻勢だけではない。ネット通販の普及に伴う消費者の購買手段の変化だ。それに対応できない総合スーパーは、“過去の産物”となってしまう。プレミアム特集「セブン&アイ イトーヨーカ堂改革の迷走」第5回は、イトーヨーカ堂、そして総合スーパーに差し迫る2つの“波”に迫った。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、編集委員 田島靖久)
アマゾンの増収額は
中堅スーパーの年間売上高に相当
流通業界に今、急速な勢いで押し寄せるのが「デジタル化の荒波」だ。
経済産業省によれば、2018年における日本国内の消費者向け電子商取引(EC)市場規模は前年比9%増の18兆円。物販全体に占めるEC化率は、過去10年間でほぼ倍増し、現在は6%に達する。
こうした急速なデジタル化を牽引しているのが、アマゾンや楽天といった「ECプラットフォーマー」たちだ。
野村證券の試算によれば、アマゾン・ジャパンの出品手数料などを含めた推定総取扱高の「増収額」は、18年に3600億円を超えた。これは中堅スーパー1社の年間売り上げに相当する規模であり、イオンの増収額の3倍に相当する。
さらに近年は、フリマアプリなど個人間ECも急増しており、その市場規模は6400億円。こうした消費者の購買行動の変化が、リアル店舗を持つ伝統的な小売業者を苦境に追い込んでいる。
米国では、既に小売り大手が経営破綻に陥り、アマゾンと競合する物販各社の株価が軒並み下落している。一方でアマゾンは、高級食品スーパーのホールフーズを買収し、リアル店舗の世界への進出を加速させている。
「そう遠くない将来に日本でもアマゾンショックが現実化する」
業界関係者はそう身構える。
デジタル化は、巨額投資が伴う。そのためには、人件費や店舗地代などの削減が不可避だが、イトーヨーカ堂の迷走を見るまでもなく、伝統的な小売業者にとってそれは至難の業だ。