もう1つの自由主義とは?

 へー、そうなんだ。つまりは、社会的弱者も含めて全員が平等に自由に生きられる社会を作ろうという主義が、自由主義ってことなのかな。いや、だからそれだと功利主義だし「平等の正義」だろ。

「しかし、一方で、高い税金をかけるなんてもってのほか、弱者を救うという名目で、他人の自由や財産を奪うべきではない、富裕層がどんなにお金を持っていてもそれは個人の持ち物なのだから、それを勝手に奪って弱者に分配するなど泥棒のやることだ―という考え方もあって、これも自由主義と呼ぶ」

 お、こっちは、善い悪いは別にして、とても自由主義って感じのイメージだ。

「さて、どうだろう。いい感じに混乱してきたのではないだろうか? 富の再分配を肯定して弱者に優しい福祉社会を作る考え方も自由主義と呼ぶし、自由競争を肯定して弱肉強食の格差社会を作る考え方も自由主義と呼ぶなら……いったい自由主義とは何なのだろうか? 実際、政治の世界でも同様で、同じ自由主義の旗を掲げているはずなのに、まったく正反対の政策を出して互いにいがみ合ったりすることが多々ある」

 なるほど、自由主義と言っても幅が広すぎるわけなのか。そりゃまあ混乱するわけだ。

「このように初学者にとって自由主義の入り口はとても迷いやすい。もし君たちが自由主義について学ぼうと誰かの本を手に取ったとしても、読み終わったあとに別の人の本を読んでみたら、まったく真逆のことが書かれている可能性がある。もちろん、さまざまな自由主義を網羅的に解説してくれる入門書もあるだろう。が、実は、またしてもここに混乱を引き起こす大きな落とし穴がある」

次回記事『「リベラリズム」と「リバタリアニズム」の違い、説明できますか?』に続く