取引先との関係とモノの売り方で
企業の盛衰を判断
次に、取引先との関係性が表れるのがモノだ。
もしも取引先が数社に限られているならば注意しよう。大企業1社に依存する企業は、競合との競争に敗れて受注を逃せば、たちまち経営危機に陥る。取引先が大企業であることは安心材料ではなく、依存していればむしろリスクだ。
逆に、本業以外の取引先が急増した場合も注意したい。窮余の一策として、本業とは無関係の多角化に乗り出した恐れがあるからだ。本業の将来性が先細りし、経営が迷走している可能性が高い。
また、扱っているモノの内容にも気を付けたい。とりわけ、主力商品やサービスのライフサイクルが短い企業も要注意だ。
例えば、半導体やアパレルは競合が多く、技術革新や次の流行がすぐに到来する。息が長く、売り上げが安定した商品やサービスを持っているか。モノの売り方で企業の盛衰が見えてくる。
最後に、経営の生命線となるカネは、信用に直結する項目だ。
2009年の中小企業金融円滑化法の施行以降、借り入れの返済猶予(リスケ)が一般的になった。それ自体は悪ではなく、賃金未払いなどの致命傷を負うくらいならリスケした方がましだが、金融機関の目は当然厳しくなる。
取引先への支払い遅延も、信用を毀損する。かつては手形が落ちなければ銀行取引停止という明確なペナルティーがあった。しかし最近は現金取引が主体になったことで、企業間の話し合いで済ませ、銀行が関知できないケースが増えた。このため、「支払い遅延が表面化しにくくなった」(友田氏)。
また、法人税や年金の未払いは論外だ。最近では税金や年金を支払わない場合、取引先に社会保険庁や税務署が直接通知し、徴収するようになった。もしそうなれば滞納のうわさが一気に広がり、信用は失墜するだろう。
自社の信用不安や倒産を防ぐためにも、企業の信用調査の基本を押さえておくことが大切だ。