ハローキティをはじめ、サンリオのキャラクターたちに触れ合える屋内型テーマパーク「サンリオピューロランド(以下、ピューロランド)」。今、「“SNS映えしすぎる”テーマパーク」としても話題で、若い女性たちを中心に賑わっています。同時にピューロランドとピューロランドの館長である小巻亜矢氏が、テレビ等で取り上げられ大きな話題となっています。
話題となっている理由は、ピューロランドが笑顔と活気にあふれるようになったのは最近のことで、5年前まではスタッフに笑顔は少なく、経営的には赤字が続く危機的な状況でした。そこから平日1日の来場者を一気に4倍まで増やし、奇跡ともいえるV字回復を果たしたのです。同じ施設、同じスタッフで果たした奇跡の再生の秘密は、スタッフたちのモチベーションと行動を変えた「人づくり」にありました。
 そのきっかけを作ったのは、「エンタメ業界の素人」を自認していた小巻亜矢さん。(株)サンリオに新卒で入社したのち一度は専業主婦になり、その後は化粧品事業など現在の業務とはかけ離れた仕事をしていたのに、サンリオグループ企業へ復帰後にちょっとしたきっかけが転じて、想定外のピューロランド館長に。
その小巻さんはこの6月、ピューロランドを運営する(株)サンリオエンターテイメントの代表取締役社長に就任しました。今回は社長就任と、ここまでのすべてをまとめた『サンリオピューロランドの人づくり』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、これまでの経緯や今後の豊富について語ってもらいました。

パワハラやセクハラの原因を取り除く
感情をコントロールする方法とは?

 今期から私が折に触れて社員に伝えているのが「自分の感情に目を向けるのこと」の大切さです。

 私たちは「よく考えなさい」と言われて育ってきました。でも、「よく感じなさい」と言われることはほとんどありませんでした。自分の心が何か感じているかキャッチせずに「どうしたらいいか」を考えてしまう。あるいは考える間もなく、後先考えずに行動してしまいがちです。

 昨今、パワハラやセクハラといった、立場を利用して人を傷つける行為が社会のあらゆる組織で顕在化しています。これらは、自分にとって不快な気持ちがあふれ、後先考えずに攻撃的な行動を取ってしまった結果です。

「イラッとしている」とか「傷ついた」とか「調子に乗りすぎている」とか……、
 自分の今の感情を客観的に見る習慣ができると、仕事でも私生活でも感情に任せた言動が減って、後で後悔するような思わぬトラブルを避けることができます。

 では、なぜ感情が言葉や行動に直結してしまうのでしょうか。

感情のモニタリングは
大人のたしなみ

 私は仕事や子育て、死を意識した大きな病気を経験するなかで、「本当の自分」とは何かという人間の心理に興味を持つようになり、51歳から仕事をしながら東京大学大学院教育学研究科で学びました。そんな私が思うには「客観的に自分を捉えて、ワンクッションおく」方法を知らないことが、ハラスメントといった感情任せによる言動が招いたトラブルの原因になります。

 何かとストレスの多い社会において、自分の心を客観視して折り合いをつけて生きていくことは、もはや「大人のたしなみ」だといっていいと思います。ところが、自分の心と向き合う方法を学ぶ機会はあまりありません。私も心が波立つ時はありますが、そんな時には年齢や性別に関係なく、すべてのビジネスパーソンに役立つ、『感情モニタリング』で乗り越えています。

 詳しくは拙著『サンリオピューロランドの人づくり』に記しましたが、ここでは簡単ではありますが、その方法の1つをご紹介したいと思います。