「一物一価」は
「ニュートンの法則」のようなもの

「ニュートンの法則」とは、「引力等がなければ投げたボールは直進する」といった原則を指すもの。しかし、それが現実にはありえないことを誰もが知っている。つまり、第一歩としてニュートンの法則を学んだ上で、実際には引力等があるから、ニュートンの法則の応用を学ぶ必要がある。

 経済学の教科書に載っている「一物一価」の理論は、人々がすべての情報を知っていて、取引のコストがゼロであれば、世界中どこでも物価は同じになるはずだ、というものだが、これも同様である。

 基礎の基礎として知っておくべき事柄であるが、それさえ知っていれば現実の経済が理解できるものでは到底ない。これらに照らしても、大都会と地方で物価が同じはずがないのだ。

 では、一物一価を目指して最低賃金を全国で統一すれば、事態は改善するのであろうか。そんなはずはないだろう。

地方の仕事が減り
東京一極集中が進む

 地方の最低賃金が上がって、地方の均衡賃金を上回るとすれば、失業が発生する。そして、失業した人は郷里を離れて大都市へ移り住むことになる。

 景気後退による失業であれば、「郷里を離れたくないから、景気が回復して仕事が見つかるまで待つ」人もいるだろうし、「しばらく大都市に出稼ぎに行って、景気が回復したら郷里に戻る」人もいるだろう。しかし、最低賃金が上がってしまうと、郷里での仕事は減ったまま戻らない。

 一方で大都市、とりわけ東京では、均衡賃金よりも最低賃金が低くなるので、労働力不足が解消せず、瞬間的には事態が悪化するかもしれない。しかし、地方での仕事探しを諦めた労働者が大量に大都市に移り住めば、時間とともに労働力不足は緩和してゆくだろう。

 その結果、人口の東京一極集中がさらに進むことになる。これは地方創生という政策目標に反しているのみならず、大災害時のリスクを増すことにもなりかねない。東日本大震災の時ですら、東京は帰宅難民で溢れていたのであるから、首都直下型地震などの際に何が起きるのか、全く想像できないだろう。