“世界一厄介な課題”と言われる「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」に挑む日本人起業家がいる。アストロスケール創業者兼CEO、岡田光信さんだ。2013年、資金も人脈も技術もない40歳が始めた「無謀な挑戦」は、たった6年で150億円を超える資金を調達して独自技術と世界初のビジネスモデルを構築し、さらに2020年の半ばにはスペースデブリ除去実証衛星の打上げも控えている。そんな“宇宙起業家”が自身の思考の原則を初めて明かした『愚直に、考え抜く。』から、反響の大きかったノウハウをご紹介する。今回は、岡田さんがスペースX訪問で気づいた「未来のつくり方」を披露する。

100年後の世界を「予測」できるか?

 未来はどこだ――。

 小さい頃、私は「21世紀には、科学のおかげで悩みのない世界になる」と言われて育った。
 予想は裏切られ、21世紀はさらに悩みの多い時代となった。ネットによって社会はフラットになり、情報は瞬時にシェアされるようになったが、争いは国レベルでもご近所レベルでも絶えることがない。

 1920年に発行された雑誌『日本及日本人』に、「百年後の日本」という企画があった。当時の数多くの識者が未来を予測している。100年後の世界を知っている現代の私たちからすれば、荒唐無稽な未来予想ばかりなのだが、このことは識者をもってしても、未来予測は外れるということを意味する。

 結局、未来は予測しても意味がない。未来は予測するものではなく、自分の意志でつくり出すものだ。世界はその総和で成り立っている。

「スペースデブリのゲーム」アイデアのどこがダメだったのか?

 私は、スペースデブリ問題というまだ誰も解いていない問題を見つけたとき、中年の危機を脱する糸口をついに見つけたと感じた。この問題は、今解かなければならない問題だ。

 最初に考えたことは、「スペースデブリを扱ったスマホ版のゲームアプリをつくる」ことだった。ITの会社を経営していたので、その延長線にある自然なアイデアだった。ゲームを通じて世界にこの問題を知らしめる、と考えた。すぐに行動に移し、アイデアと絵コンテを持って、JAXAを訪問した。しかし、私の考えが足らず何の合意にも至らなかった。

 実はこのJAXAでの失敗の体験が私の進む道を大きく変えてくれた。

 JAXAからの帰り道、呆然としながら、考えた。私がつくりたい未来ってなんだろう。世界中の人間がスペースデブリのゲームで遊ぶ状態だろうか。違う。今後も増えつづけるスペースデブリを定常的に除去していく状態、宇宙が持続的に利用可能な状態こそが私の考える未来の「あるべき姿」だった

未来は、自分の手でつくるもの。

 2013年5月4日、アストロスケール社が誕生した。
 その3日後、私は米国ロサンゼルスにあるイーロン・マスク率いるスペースX社にいた。工場を見学させてもらうために。

「ノブ、技術を内製化しなければイノベーションは起こせない。自分で工場を持つんだ」

 この言葉で、未来は定まった。自分で工場を持ち、技術を開発し、スペースデブリ除去サービスが当たり前に存在する未来をつくるのだ。