会計のキホンは、栓をしていないお風呂だ
「では、まずは会計の基本からだ! 会計の基本は、栓をしていないお風呂なんだよ!」
「先輩、なんですか。藪から棒に」
川上のテンションについていけない早苗は、冷静にツッコミを入れた。
「まぁ、慌てなさんなって。さなえが会社のみんなに説明ができないと、意味ないだろう? だから極力簡単な言葉やイメージで会計を掴んでほしいんだ」
そう言うと、川上は早苗の赤い手帳に絵を描きだした(下図表)。
「最初にお湯が100Lありました。そこに250Lのお湯を入れました。ただうっかり栓を閉め忘れていたため、200Lのお湯が流れ出てしまいました。さて、現在のお湯は何Lあるでしょうか?」
「小学校レベルの問題ですね。えっと、100+250-200で……150です」
「正解! 会計の基本的な考え方は、今さなえが答えてくれたお湯の計算式に集約されている。計算式の4つの情報、つまり、初めにあった数量、増えた数量、減った数量、終わりに残っている数量をこんなふうに『違い棚』を描いて整理していくんだ」
川上は次のページに右と左で棚板の高さの違う棚の絵を描いた(下図表)。
「違い棚に情報を整理……。ああ、簿記でいう総勘定元帳の『T字勘定』ですね」