会計は、必ず左と右で数値が常に一致するようになっている

 総勘定元帳とは、勘定科目ごとの取引を記録する帳簿である。

 簿記の学習では、ローマ字の「T」を書いて簡便的な総勘定元帳として、問題を解くことから別名「T字勘定」と呼ばれている。

 「そう。『違い棚』はT字勘定のことだ」

 「なんか、比喩が多いですね」

 「簿記を習っていない人にむずかしい簿記の専門用語で話しても伝わらない。だから、違い棚のほうがいいの! イメージが掴めるだろう?」

 「お風呂に、違い棚かぁ。たしかに、イメージはしやすいですね」

 「で、ここで大事なことなんだけど、会計は左と右で情報を整理して、必ず左と右で数値が常に一致するようになっているんだ」

 「そうなんですね」

 「今回のお風呂の式でいうと、左側の初めの数量100L+増えた数量250Lの合計350Lは、右側の減った数量200L+終わりの数量150Lの合計350Lと一致する。この右と左の数値が一致する公式を『会計恒等式』っていうんだ。これが、会計を貫く大原則なんだよ!」

 「会計恒等式ですか。初めて聞きました」

 「これ、すごく大事な概念だから覚えてね」
 キャラメルマキアートをかき混ぜながら川上が言った。

 つづく

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008 年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。