「表に出たらポーラ崩壊しますよ」

男性 「不法行為によってね、その、株式を取得したと、領得したと、そういうことがやっぱり今まで秘してきたことでしょうから、それは、あの、表に出たらポーラ崩壊しますよ。あえて申し上げるけど。第三者に相談したら」

社長 「まあ、それはでも、あの、私の後押しをするからってことであって、まあ、でも、その、でも、その、崩壊するということって、彼(元ナンバー2)はやろうとしてるわけですよね。分かって、もしそれが分かって」

男性 「もう、それは、だから、社長が退かなければっていうことなんでしょう」

〈17年12月18日の音声データ抜粋〉 告発後、鈴木社長と元ナンバー2が初めて会談した日

ポーラ本社社屋東京・五反田のポーラ・オルビスHDの登記上の本社。ここで鈴木社長は男性との2回目の会談と、元ナンバー2との会談を行った

社長 「勘弁してよ、もうさ。どういうことよ」

元ナンバー2 「あのー、それは、もう**先生(告発の仲介者であるHDリスク管理業務委託先の男性)を通じてお伝えをさしていただいている通りでありますけれども」

社長 「うん。だけど、まあ、そのー、××君(元ナンバー2)が望んでることは、結局あれだよな。まあ、△△さん(当時の専務)や、その、そういうのがいろいろ、関係者が仕事してくれて、資本の承継を実現さしてくれた

元ナンバー2 「はい」

社長 「うん。それと反することじゃないの?

元ナンバー2 「うーん」

社長 「え、その辺のその考え方が分かんないんで、俺は、まあ、捺印してる、署名・捺印してる、えー、確約書ってのは、見ても俺には理解できなかった。ま、ついては、だから会長の意に沿ってやっていただいてるやつ、やって、やってもらったやつが結局何だったのかっていう気がしてるわけ」

 (中略)

社長 「うん。うん。生前贈与でもいいっていうことを聞いてたけどね。つまり、その」

元ナンバー2 「ただ、生前贈与のときもやっぱ70%の課税がありますから」

社長 「だから、そこまで考えて、えー、資本の承継を、ま、してほしいっていうことだったんじゃないのかな。つまり僕の持ち分を、その、ね、会社の持ってるものを僕の方に承継するという、それが最後の、あの病棟での遺言状に近いものであったと思うんだけどさ」

 (中略)

元ナンバー2 「本気です。私ももう、悩みまくりましたから。11月15日に会長のお墓に行って、決めました」

社長 「会長、何か言ってたかな」

元ナンバー2 「やっぱ会社のため」

社長 「会長がそう言ってたの?」

元ナンバー2 「会社のためです」

社長 「会長がそう言ってたのか」

元ナンバー2 「さあ。私は会長の思いや考え方というものを理解してるつもりでおりますけれども」

社長 「会長の意に沿わないことじゃないのか、これは。会長とか、△△さん(当時の専務)も、意に沿わないことなんじゃないのかな、これは

 (中略)

「会社のためになるかどうかよく考えて」

社長 「会社のためになるかどうか、うん、よく考えてもらって」

元ナンバー2 「いえ、私はもう考えましたので。もう社長には(ポーラ美術館を運営するポーラ美術振興財団)理事長として、えー、見守っていただければと思っておりますので、本来。ただ、これ出たら、ちょっと、あのー、理事長としてもっていうのはちょっと厳しくなるとは思いますけれども」

社長 「ま、今日は、ま。××君(元ナンバー2)の、あの、真意を確認したかったということと、俺が、まあ、社長として何をやってきたのかっていう、17年間の振り返りをするためのいろんなことを、うん、××君(元ナンバー2)から聞いたので、ま、十分に考える材料としてはできたかなと思ってるんで。ま、繰り返しになるけど、もう少し時間を、おー、もらいたいと思ってます」

 (中略)

元ナンバー2 「確約書、どうされますか。お戻しされますか」

社長 「いや。預かっとくよ、もちろん。真剣に考えてんだから

元ナンバー2 「はい」

社長 「真剣に考えるなあ、17年間

(本編集部注:鈴木社長は2000年に就任したため、この面会時点で丸17年間在籍している)

 ◇

 本編集部記者が17年12月6日の音声データを聞いてまず感じたのは、内部告発を切り出された鈴木社長の慌てようだ。同月11日以降の会談ではやや余裕を取り戻し、特に同月18日の会談では故常司氏や家族の話を振って元ナンバー2が情にほだされるように仕向け、問題の沈静化を狙っているかのように聞こえた。音声データ3本をトータルで評価すると、「捏造の有無については争いがなく、社長退任の条件を巡って駆け引きをしていた」かのようにも聞こえる。

 だが、鈴木社長が東京地裁に提出した今年8月9日付の陳述書によると、その解釈は違うという。

 陳述書によれば、17年12月6日の会談から、「(告発書面を一読し)記載された内容はあまりにも荒唐無稽」「(仲介者の男性は)要注意人物。何を要求しようとしているのか確認するのが先決と考え、ひとまず反論は控えた」と、内心は冷静に対応していた旨を説明。同月18日の元ナンバー2との会談に関しては、「異常な言動もあったため、もはや冷静に話し合うことなどできない状況」「もはや何を言っても無駄」と記している。

 本編集部は鈴木社長に見解を求めたが、HD秘書担当を通じ、「係属中の訴訟に関することですので、コメントは控えさせていただきます」と回答があった。

 東京地裁で9月9日午前11時から、鈴木社長、元ナンバー2らの証人尋問が予定されている。これらの音声データを巡って、原告・被告双方の代理人弁護士による激しい尋問合戦が予想される。

Banner & Graphic designed by Misuzu Hara