効果的な「セルフ・アウェアネス」には、「フィードバック」を活かす

中原 相手にフィードバックするとき、言いにくいことを言わなければならない場面がどうしても出てきますよね。それが皆でやることのハードルを上げている一因なので、フィードバックに関しては基本的な「型」を覚えるとよいでしょう。

 たとえば、よく言われるようにまず、「シチュエーション(S : Situation)」と「ビヘイビア(B : Behavior)」と「インパクト(I : Impact)」をセットで見ていきます。頭文字をとって「SBI情報」と言われます。「あなたがどういう状況(シチュエーション)で、どんな行動(ビヘイビア)を取ったことが、どんな結果(インパクト)を出したか? どんな良いことがあって悪いことがあったか?」

 このセットを踏まえたうえで、「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」と問いかけるわけです。この基本的なやりとりの型を覚えて、慣れるまで練習する。武道と同じです。慣れてきたら、アレンジを加えていけばいい。場数を踏んでいけば、かなり質の高いフィードバックをできるようになると思います。

中竹 まったく同感です。私はスポーツの場ではコーチのデベロッパー(育成者)を務めていますが、コーチは基本的にプライドが高いので、人のフィードバックを拒絶しがちです。これをどう改善するかというと、いきなりフィードバックはしない。「今日のあなたのゴールは何ですか?」「今日の良かったことは何ですか、悪かったことは?」「次変えるとしたら何を変えますか?」「今日の学びは何ですか?」と聞いていく。型が決まっていて、何度も何度も繰り返していくと、ちゃんとできるようになります。コーチのデベロッパーには国際ライセンス制度があり、このやり方は長年の蓄積によってフォーマット化されています。

中原 フィードバックを相互にやってみて、相手のフィードバックのどこでイラッときたとか、フィードバックのフィードバックをやるのもいいですね。フィードバックはフィードバックすることでしか熟達しないし、フィードバックに対してフィードバックを受けることでしか熟達しない。だからなるべくそういう機会をつくることで、より効果的にセルフ・アウェアネスに必要なフィードバックの質を高めていくことができると思います。

※対談後編『リーダーに必要なのは、「判断」ではなく「決断」』は明日9月27日(金)公開予定です。