今は「網業革命」の時代
クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント/good design company 代表
1972年 東京生まれ。1996年 多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。 1998年 good design company 設立。ゼロからのブランドづくりをはじめ、ロゴ制作、商品企画、パッケージデザイン、インテリアデザイン、コンサルティングまでをトータルに手がける。
著書に『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)、『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)、『センスは知識からはじまる』『アウトプットのスイッチ』『アイデアの接着剤』(すべて朝日新聞出版)などがある。初の作品集『アイデア特別編集 good design company 1998-2018』(誠文堂新光社)も発売中。
水野 そもそも、なぜ「カッコいい」をテーマとした本を書こうと思ったのですか?
平野 日本社会には今、ある種の停滞感があります。
しかし、その中でもみんなが新しいものをクリエイトしていますよね。そこに、僕自身も参加していたい、クリエイトしていたい、という気持ちがずっとありました。新しいものが世に出てきた時には、みんながそれを「なんかすごい」「カッコいい」と称賛して盛り上がりますよね。その「カッコいい」という体感からいろいろな文化も流行ってきたので、それを言語化して整理してみたいと思ったのがきっかけの一つです。
水野 「カッコいい」から文化が生まれるという視点はおもしろいと思いました。
僕は文明の大きな変化を「ビッグインパクト」と名付けているんですけど、それが起こった時には、必ず文化の揺り戻しが起こります。
大航海時代でいうとルネサンス、産業革命の時代でいうとアーツ・アンド・クラフツ運動。現代に生きている僕らは、今がビッグインパクトかそうでないか、わかりづらいんですけど、おそらく農業革命、産業革命ときて、今は「網業(もうぎょう)革命」なんじゃないかと思うんです。
平野 網業(もうぎょう)ですか。
水野 そんな言葉はないと思いますが、平野さんの「分人主義」に対抗して、自分も何か言葉を考えてみようと思って(笑)。
1900年前後から電波が通信手段となって、「通信網」ができてきた。それが今のインターネットに至っているので、「網」というわけです。
平野 それはわかりやすいですね。私たちはインターネットが出てくる前と後で分断して考えがちですけど、ネットワーク(網)として考えると、19世紀の終わりくらいから今までが、連続的に見えてきますね。
水野 そう思います。網業革命というのは文明の話ですが、その文明に対する文化というものを、「カッコいい」から見つめ直す時期なんじゃないかと、本を読んであらためて考えさせられました。