金髪も個性の一つ

能作:僕は、髪の色は個人の嗜好の問題であり、個性だと思っています。会社が規制する事案だとは思えません。
 そして僕は、ロックが大好きです。
「金髪にすることで自分らしく仕事ができる」
「音楽を聞きながら作業をしたほうが集中できる」のであれば、金髪もロックも大歓迎です。

――寛大な社長ですね。実際、工場を拝見しましたが、規律が乱れるどころか、工場内の音楽をリズムに変え、チームワークよく、声がけしながら、若手職人がイキイキ働いていました。長く経営書の取材をしていますが、こんな職場は初めてみました。

能作:僕は同業者から、「どうして土日も仕事をするのか」と聞かれることがあります。
 その場では、「貧乏暇なしですから」と答えるのですが、本心は違います。仕事が好きだから。仕事が楽しいからです。
 好きだから頑張れるし、楽しいから突き詰められます。
 仕事が「嫌だ」と思ったら、その時点で技術の向上も、人としての成長も止まってしまいます。
 自分が関わることになった仕事を積極的に「好き」になれたら、その先に新しい技術や新しいアイデアが次々に生まれてくるのです。

――そうですよね。いつ見ても、能作さんは楽しそうに仕事をしていますよね。夢中は努力に勝てない、という言葉を聞いたことがありますが、まさに能作さんにぴったり当てはまる言葉ですね。

能作:ありがとうございます。富山の本社の雰囲気を少しでも知りたい方は、第1回連載もご覧いただけたらと思います。

【カンブリア宮殿で話題の「能作」】<br />なぜ、能作では<br />「金髪職人」がロックを聞きながら<br />イキイキ働いているのか?能作克治(のうさく・かつじ) 株式会社能作 代表取締役社長
1958年、福井県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒。大手新聞社のカメラマンを経て1984年、能作入社。未知なる鋳物現場で18年働く。2002年、株式会社能作代表取締役社長に就任。世界初の「錫100%」の鋳物製造を開始。2017年、13億円の売上のときに16億円を投資し本社屋を新設。2019年、年間12万人の見学者を記録。社長就任時と比較し、社員15倍、見学者数300倍、売上10倍、8年連続10%成長を、営業部なし、社員教育なしで達成。地域と共存共栄しながら利益を上げ続ける仕組みが話題となり、『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)など各種メディアで話題となる。これまで見たことがない世界初の錫100%の「曲がる食器」など、能作ならではの斬新な商品群が、大手百貨店や各界のデザイナーなどからも高く評価される。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞、第1回「三井ゴールデン匠賞」グランプリ、日本鋳造工学会 第1回Castings of the Yearなどを受賞。2016年、藍綬褒章受章。日本橋三越、パレスホテル東京、松屋銀座、コレド室町テラス、ジェイアール 名古屋タカシマヤ、阪急うめだ、大丸心斎橋、大丸神戸、福岡三越、博多阪急、マリエとやま、富山大和などに直営店(2019年9月現在)。1916年創業、従業員160名、国内13・海外3店舗(ニューヨーク、台湾、バンコク)。2019年9月、東京・日本橋に本社を除くと初の路面店(コレド室町テラス店、23坪)がオープン。新社屋は、日本サインデザイン大賞(経済産業大臣賞)、日本インテリアデザイナー協会AWARD大賞、Lighting Design Awards 2019 Workplace Project of the Year(イギリス)、DSA日本空間デザイン賞 銀賞(一般社団法人日本空間デザイン協会)、JCDデザインアワードBEST100(一般社団法人日本商環境デザイン協会)など数々のデザイン賞を受賞。デザイン業界からも注目を集めている。本書が初の著書。
【能作ホームページ】 www.nousaku.co.jp