かつては安定企業の代表格だったメガバンクも、
いまや数千・万人単位と大量の人員削減を余儀なくされている。
地銀の凋落ぶりは、もはや目を覆わんばかりだ。

なんだかんだと金融行政に守られ、
誰がやっても儲かるような護送船団方式のなかで安穏と過ごしてきた銀行に
市場競争へ立ち向かうまともな力量はない。

いまやAIや仮想通貨といったまったく異質の金融技術が、
銀行業務の独占に容赦なく襲いかかってきているのだ。

どんなビジネスアイデアも、本来は経営者の個人保証や担保がなくても、
アイデアそのものがお金を生み出しそうかどうか、「事業性」を評価して融資されるべき。

その事業性を審査する能力こそ銀行のコアスキルであるべきなのだが、それがない。

いまごろになって事業性評価に基づく融資の拡大を標榜する銀行も増えつつあるが、
これまで担保主義で融資してきたのだから、必要な審査能力は備わっていないのだ。

こぞって消費者金融を手掛けるも、焼け石に水。もはや八方塞がり。
不動産などの担保を確保して融資するという質屋のような銀行業務は、もういらない。

『もう銀行はいらない』を上梓した経済評論家・上念司氏が、
確かな見識と舌鋒鋭い指摘で、銀行業界を“筆刀両断”する。

【経済評論家・上念司】<br />非効率で時代遅れな銀行の<br />ビジネスモデルを支えている<br />“いいカモ”とは?Photo: Adobe Stock

 【前回】からの続き

 この傾向は企業向け融資だけでなく、個人も含めた融資全体の傾向としても観察できます。
 次のグラフをご覧ください。

【経済評論家・上念司】<br />非効率で時代遅れな銀行の<br />ビジネスモデルを支えている<br />“いいカモ”とは?
【経済評論家・上念司】<br />非効率で時代遅れな銀行の<br />ビジネスモデルを支えている<br />“いいカモ”とは?

 大手行(メガバンク)は中小企業向けの銀行融資が大きな割合を占めていますが、実はこの伸びをけん引しているのが不動産業です。
 地域銀行(地方銀行)のグラフを見ると、2016年頃まで「個人による貸家業」の伸びが顕著です。
 
 信用金庫も不動産向け貸出が増加していることが確認できます。
 これは、アパートやマンションを建てる個人向けの「アパート・マンション(アパマン)ローン」と呼ばれるものです(この件については、あまりに根の深い病巣なので後ほどみっちりと検証します)。

 グラフから傾向を分析すると、地銀もメガバンクも不動産向けの融資を2016年頃まで右肩上がりに伸ばしていました。
 信金はその動きにやや遅れてついてきた感じで、ピークは1年遅れの2017年になっています。

 地銀は特に「個人による貸家業」に向けた融資を増大させたことが見て取れます。
 この点について日銀は、次のように解説しています。