九州のある地方銀行には
メールアドレスがない?
1969年東京都生まれ。1993年中央大学法学部法律学科卒業。在学中は日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年より、経済評論家・勝間和代と「株式会社監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任。現在は代表取締役。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として経済政策、外交防衛政策など著書多数で、『もう銀行はいらない』(ダイヤモンド社)、『経済で読み解く日本史 文庫版五巻セット』(飛鳥新社)、『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)などがある。テレビ、ラジオなどでも活躍中。
経済が右肩上がりで、放っておいても預金が集まり、融資先がたくさんある時代はとっくに終わっています。
低成長時代に入り、消費者のニーズも多様化し、将来的に何が伸びるビジネスかは誰にもわかりません。
銀行は持ち前の“シンサノウリョク”を活かして、生活を一変するようなイノベーションを起こす企業を発掘するべきなのですが、そんなことは無理です。
だいたい、銀行に就職しようなどという若者は、安定志向でリスク回避的な傾向が強い。
かくいう私も大学卒業時、いろいろ考えた末に日本長期信用銀行を就職先に選んだ理由はそれでした。
自分の人生にリスクを取りたがらない人間が、損失をもたらすリスクの高いベンチャー向け融資などできるはずがありません。
そういうリスク回避傾向の強い人間が集まるからこそ、減点主義の人事評価で、ひたすら現状維持の守りの日々にも耐えられるのでしょう。
その象徴ともいえるのが、アナログすぎる仕事のやり方です。
例えば、九州のある地方銀行にはメールアドレスがありません。
信じられないかもしれませんが、Eメールが使えないのです。
ある物件の建設費用の融資について相談していた業者が、Eメールで図面を送ろうとしたところ、銀行の担当者から断られたそうです。
Eメールは使えないのでファクス送信してほしいと頼まれたそうですが、図面の細かい線が不鮮明になってしまうので支障をきたします。
そもそも、業者のほうはIT化が進んでおり、ファクスを廃止していました。
結局は郵送で図面をやり取りすることになったそうです。
いつの時代の話かと驚きますが、実はこれ、全国の“地方銀行あるある”なのだそうです。
以前から使っていたという現状維持バイアス以外に、ファクスによる業務を正当化する理由はあるのでしょうか?
無駄な経費を圧縮するなど、本気で利益を出そうとしているのでしょうか?
一晩、問い詰めたいくらいの気分になります。
【次回へ続く】