科学でわかった絶対オススメの「妊娠中の4大食事」Photo: Adobe Stock

乳幼児の食事と健康について、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで世界的に知られる研究チームを率いて、100本近い論文を発表してきたクレア・ルウェリンとヘイリー・サイラッドは、赤ちゃんの食事について、次のように語る。
「最初の1000日の経験が人生のほかのどんな時期よりも将来の健康と幸福に大きく影響することが、世界の科学者のあいだで広く認められています」「赤ちゃんがどんな食べ物を口にし、どんな習慣を身につけるかは、生涯にわたる影響をもたらすのです」
受胎してから2歳くらいまでのあいだに、どんなものをどのように食べてきたかが、「健康」「好き嫌い」「肥満」「アレルギー」など、その後の人生に大きく影響するというのだ。
では、何をどう食べたらどんな好影響・悪影響があるのか? 「妊婦は何を食べるといいか」から「離乳食は何をどうあげるべきか」といったことまで、クレアとヘイリーはそのすべてを『人生で一番大事な最初の1000日の食事』(上田玲子監修、須川綾子訳)にまとめた。同書の日本版発売を記念して、特別にを一部紹介したい。

難しく考えなくて大丈夫

 妊娠中に母子に欠かせない栄養をすべてとろうとして、特別なものや、珍しいものを食べる必要はありません。

 大切なのはバランスのとれた食事です。それでも、気分が悪いときや疲れているとき、抑えがたい食欲と闘っているとき、赤ちゃんの誕生に備えて日々多くのことに追われているときは、なかなか難しいものです。

 公衆栄養学の独立した慈善機関であるファースト・ステップ・ニュートリション・トラストは、次の①と②の食品群を中心に食事プランを立てること、そして1日の食事の3分の1以上をこの2つの食品群から摂取することをすすめています。

その1:でんぷん質の多い食品

 パン、パスタ、米、ジャガイモ、朝食用シリアル、麺など。とくに全粒のものや低GIのものを選びましょう。具体的には、全粒オート麦、胚芽米、タイ米、全粒粉パン、小ぶりの新ジャガイモ、全粒小麦のパスタなどです。

 どれも優れたエネルギー源になり、食物繊維や鉄、カルシウム、ビタミンB群などさまざまな栄養素も含まれています。

その2:果物と野菜

 毎日少なくとも400グラムは食べましょう。形態としては、生、冷凍、缶詰、乾燥、搾ったジュースを含みます。ただし、ドライフルーツと果汁には遊離糖類が多く含まれていることを忘れないでください。

 遊離糖類とは、食品に添加されている砂糖のほか、ハチミツやシロップ、甘みを加えていない果汁にも自然に含まれている糖類のことです。

 妊娠中は血糖値を最適にするため、遊離糖類のとりすぎに気をつけてください。また、そうした甘いジュースなどを摂取するさいは食事と併せてとるようにしましょう(ほとんどの果汁に含まれる豊富なビタミンCは、肉以外の食材からの鉄の吸収を助ける付加的な効果があります)。果物と野菜はビタミン、ミネラル、食物繊維の宝庫です。

 ほかにも2つ、妊娠中に欠かせない大切な食品群があります。

その3:乳製品または代替品

 牛乳、チーズ、ヨーグルトなど。毎日適量をとるように心がけ、できれば低脂肪、低糖質のものを選びましょう

その4:たんぱく質を多く含む食品

 肉、魚、卵、豆類など。豆類を増やし、赤身の肉を選び、調理の段階で余計な油を加えないようにしましょう。

「脂肪、砂糖、塩」は量を抑える

 脂肪、砂糖、塩を多く含む食品は量を制限しましょう。脂肪や砂糖が多い食品は栄養豊富な食品にかわって必要カロリーを満たしてしまい、妊娠中に必要な栄養をすべてとるにはカロリーオーバーになりがちです。また、脂肪については飽和脂肪酸の少ない食品を選び、できれば多価不飽和脂肪酸をとり入れましょう。

●遊離糖類は1日につき、30グラム以下に抑えるようにしましょう(角砂糖約7個分)

 生の果物や野菜、穀物、シリアルにもともと含まれている糖分は遊離糖類ではないのでカウントされません。一般的に、食品ラベルには、糖類はトータルの量しか表記されていないので、遊離糖類の含有量はなかなかわかりません。参考までに、大半のデザート(ケーキ、ビスケット、チョコレート)と、すべてのフルーツジュースには遊離糖類が含まれています。

 コーヒーや紅茶に砂糖を加える習慣があれば、妊娠を機に毎日少しずつ量を減らし、やがて完全にやめるようにしましょう。

●脂肪は全般的に摂取量を減らし、とくに飽和脂肪酸を減らしましょう。

 飽和脂肪酸の摂取量を減らすには、こんな方法があります。

 肉は赤身を買い、脂があれば切り落とす。食材は油で揚げず、グリルやオーブンで焼いたり、ゆでたりする。鶏肉は皮をとり除く。乳製品は低脂肪ヨーグルトなど低脂肪のものを選ぶ。パンにぬるバターやジャムなどを減らす。ケーキやビスケット、油で揚げたスナックなど加工食品はあまり食べない。

●食塩は1日5グラム(約小さじ1杯)以内にしましょう。

 私たちが口にする塩分の多くは加工食品に由来するので、これを控えれば、摂取量を減らせるはずです。塩分の多い食品は以下のとおりです。肉や魚の燻製、ハムやベーコン、スナック菓子(ポテトチップスなど)、チーズ、パン、一部のシリアル。

(本原稿は、『人生で一番大事な最初の1000日の食事』〈クレア・ルウェリン、ヘイリー・サイラッド著、上田玲子監修、須川綾子訳〉からの抜粋です)

クレア・ルウェリン(Dr. Clare Llewellyn)
オックスフォード大学卒業。乳幼児の食欲と成長についての遺伝疫学の研究で博士号を取得。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン准教授。同大学公衆衛生学部疫学・保健研究所の行動科学・健康部門において肥満研究グループを率いる。人生の最初の瞬間からの摂食行動を探求するため、史上最大の双子研究「ジェミニ」に参加。また、子どもの食に関して70以上の科学論文を発表。英国王立医学協会ほか、世界中で40以上の招待講演を行っている。英国肥満学会、欧州肥満学会、米国肥満学会などの研究機関から多数の国際的な賞を受賞している。

ヘイリー・サイラッド(Dr. Hayley Syrad)
心理学者。2007年にサウサンプトン大学で心理学学士号を、2016年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの保健行動研究センターで行動栄養学の博士号を取得。乳幼児が「何をどう食べるか」に関して食欲の役割に焦点を当てて研究。幼児の摂食行動について、多数の記事を執筆、注目を集めている。

監修者:上田玲子
帝京科学大学教育人間科学部教授。幼児保育学科長。博士(栄養学)。管理栄養士。日本栄養改善学会評議員や、日本小児栄養研究会運営委員なども務める。乳幼児栄養についての第一人者。監修に「きほんの離乳食」シリーズや、『はじめてママ&パパの離乳食』『マンガでわかる離乳食のお悩み解決BOOK』(いずれも主婦の友社)など多数。

訳者:須川綾子
翻訳家。東京外国語大学英米語学科卒業。訳書に『EA ハーバード流こころのマネジメント』『人と企業はどこで間違えるのか?』(以上、ダイヤモンド社)、『綻びゆくアメリカ』『退屈すれば脳はひらめく』(以上、NHK出版)、『子どもは40000回質問する』(光文社)、『戦略にこそ「戦略」が必要だ』(日本経済新聞出版社)などがある。