その6:野菜の味をごまかさない

 好き嫌いの多い子の親たちのなかでは、野菜の味をほかの食べ物でごまかそうとする傾向が高まっています。

 野菜をほかの味のなかに「隠す」のはとても魅力的です。たとえば、ソースをかけたり、甘い果物などもっと子どもが好きな味を加えたりというように。ところが、それでは野菜の味を経験していないことになります。野菜に慣れて好きになるには、それぞれの味を感じ取れないといけません。

 また親は、野菜をスマイルマークになるように盛りつけるなどの、子どもに食べ物を魅力的に見せる工夫もあまりしていません。工夫は悪いことではありません。大人も盛りつけがいいとおいしく感じやすくなるからこそ、多くのシェフが料理に手の込んだ装飾をほどこしているのです。お皿のうえでニンジンを「鼻」に見立てると、よく食べるようになるなら、ぜひそうしましょう。

 それから、新しい食べ物や味を経験させ、嫌いなものを取り入れる一方で、好物も必ず用意してください。そうすれば、子どもは確実に何かを口にし、自分の食事にある程度の主導権を握っている気分を味わえます。また、親の不安を抑えるのにも役立つでしょう。

 どんな食事の内容でも、食欲の乏しい子どもは、食べ物にすぐに圧倒されることを忘れないでください。量は食べきれそうに見える程度に抑え、大きさは一度に少しずつ食べられるように切り分けます。食べ終えても足りないという意思表示があれば、そのつどお代わりを与えて差し支えありません。

 食べるのが遅く、食の細い子どもに対して、時間制限を設けるのは意外に思えるかもしれません。けれども、食事の時間を30分に制限すると、子どもの不安をやわらげるのに役立ちます。試練の時間はやがて終わると思えるからです。たとえそれ以上引き延ばしたとしても、子どもがさらに食べることはまずないでしょう。

 そして最後に、あきらめてはいけません! 先ほど述べたように、子どもは繰り返し触れることで嫌いな食べ物を好きになります。努力はいつかきっと報われるはずです。

(本原稿は、『人生で一番大事な最初の1000日の食事』〈クレア・ルウェリン、ヘイリー・サイラッド著、上田玲子監修、須川綾子訳〉からの抜粋です)

クレア・ルウェリン(Dr. Clare Llewellyn)
オックスフォード大学卒業。乳幼児の食欲と成長についての遺伝疫学の研究で博士号を取得。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン准教授。同大学公衆衛生学部疫学・保健研究所の行動科学・健康部門において肥満研究グループを率いる。人生の最初の瞬間からの摂食行動を探求するため、史上最大の双子研究「ジェミニ」に参加。また、子どもの食に関して70以上の科学論文を発表。英国王立医学協会ほか、世界中で40以上の招待講演を行っている。英国肥満学会、欧州肥満学会、米国肥満学会などの研究機関から多数の国際的な賞を受賞している。

ヘイリー・サイラッド(Dr. Hayley Syrad)
心理学者。2007年にサウサンプトン大学で心理学学士号を、2016年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの保健行動研究センターで行動栄養学の博士号を取得。乳幼児が「何をどう食べるか」に関して食欲の役割に焦点を当てて研究。幼児の摂食行動について、多数の記事を執筆、注目を集めている。

監修者:上田玲子
帝京科学大学教育人間科学部教授。幼児保育学科長。博士(栄養学)。管理栄養士。日本栄養改善学会評議員や、日本小児栄養研究会運営委員なども務める。乳幼児栄養についての第一人者。監修に「きほんの離乳食」シリーズや、『はじめてママ&パパの離乳食』『マンガでわかる離乳食のお悩み解決BOOK』(いずれも主婦の友社)など多数。

訳者:須川綾子
翻訳家。東京外国語大学英米語学科卒業。訳書に『EA ハーバード流こころのマネジメント』『人と企業はどこで間違えるのか?』(以上、ダイヤモンド社)、『綻びゆくアメリカ』『退屈すれば脳はひらめく』(以上、NHK出版)、『子どもは40000回質問する』(光文社)、『戦略にこそ「戦略」が必要だ』(日本経済新聞出版社)などがある。