仕事と家庭の両立に悩む人は心疾患リスクが高い?
家庭生活のために仕事のパフォーマンスが低下する、あるいは仕事のために家庭生活が犠牲になる―そうしたことが原因でストレスを抱えると、心臓の健康状態が悪化する可能性があり、特に女性でその傾向が強いことが、新たな研究で明らかになった。
この論文の上席著者であるサンパウロ大学(ブラジル)教授のItamar Santos氏は、「研究により、医師と患者が心血管の問題に対処する際に考慮すべき新たな因子が明らかになった」と説明している。研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association」10月10日号に発表された
ストレスが慢性的に続くと体内で炎症が進み、心臓に悪影響が及ぶ可能性があることは専門家により指摘されている。心臓の健康状態が悪化すると、血圧や脂質にも影響を与え、また、睡眠不足や運動不足、質の悪い食生活や体重の増加などを招くこともある。
Santos氏は、今回の研究の背景について「これまでにも複数の研究で、大きなストレスを抱えている人では心血管疾患の有病率が高いことが一貫して示されていた。そこで、われわれはワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事と家庭の両立で葛藤を抱くこと)が及ぼす影響に的を絞って調べることにした」と説明している。
研究では、ブラジル人を対象にしたELSA-Brasil研究の参加者から抽出した、35~74歳の労働者1万1391人(男性5424人、女性5967人)のデータが解析された。これらの労働者は、仕事が家庭生活に与えている影響と、家庭生活が仕事に与えている影響の強さを評価するモデルに基づいた質問票に回答していた。心血管の状態については質問票と診察、臨床検査から得た喫煙やBMI、食事、身体活動、脂質、血圧、血糖値などの情報を基にスコア化した。