「できなかった課題を解決しないと意味がない」
“100%賛成”した孫正義氏の助言

 両トップの会合がきっかけとなり、6月中旬から親会社のソフトバンクやネイバーを交えて提携の可能性を協議し、8月上旬に経営統合へと検討内容が発展した。9月にはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長に、川邊社長が経営統合案について説明している。その場で、孫会長は「100%賛成だ。日本やアジアのために、スピーディーに進めるべきだ」と賛同。そして、「ユーザーのためになることをしないと誰からも支持されない。両社が一緒になり、今までにできなかった大きな課題を解決しないと意味がない」と助言したという。

 8200万人のユーザーを抱えるLINEは、従来は自前路線を貫き、スマートフォン上であらゆるサービスをワンストップで手掛ける「スーパーアプリ」を目指していた。

 今回心変わりした理由について出澤社長は、「グローバルなテックジャイアントという競合の存在と、AI化のスピードへの危機感があった。LINE一つであらゆることが実現できるスーパーアプリ戦略をとってきたが、時間と共に強いプレイヤーが出てくる。今手を打って次のステージに進むべきと思うことがトリガーになった」と説明する。

 会見では実際には社名こそ名指ししなかったものの、統合後のZHD&LINEの規模と、米アルファベット(グーグル)やアマゾン、フェイスブック、中国アリババ、テンセントの時価総額や営業利益などの数字を比較。「現状で2社が一緒になっても、営業利益や従業員数、研究開発費はけた違いの差。ネット産業は人・カネ・データが強いところに集約してしまう、強いところがもっと強くなる産業構造だ」と出澤社長は危機感を露にした。

 経営統合のシナジーについて、ヤフーには約6700万人のユーザーと300万社の法人顧客が、LINEには8200万人のユーザーと350万社の法人顧客がいることをアピール。「重複ユーザーはいると思うが、LINEは若年層でスマホアプリでの利用、ヤフーはシニア層でPC利用という補完関係にある」と川邊社長は説明した上で、「最大のシナジーは両社のサービスだ。ヤフーにはメッセージアプリがないがLINEは国民的なメッセージアプリ。一方でLINEはeコマースにそれほど注力していないがヤフーは頑張っており、お互いに補えるシナジーがある」と強調した。

 一方、キャッシュレス決済の分野では、お互い火花を散らす競合だ。「LINEペイ」は14年にサービス開始したが、昨秋デビューしたソフトバンクグループの「PayPay(ペイペイ)」が支払額の一部を還元する「100億円キャンペーン」を連発して猛追。LINEペイも今年5月に「300億円祭り」で対抗し、体力勝負の消耗戦に突入している。