LINEの19年12月期第3四半期までの9カ月間で、売上高1667億円に対して営業赤字は275億円。広告などのコア事業は249億円の営業黒字だったのにもかかわらず、LINEペイを含む戦略事業が524億円の営業赤字で、LINEペイの出血が大きな痛手になっており、今回の経営統合を“LINE救済”とみる声も業界では根強い。
キャッシュレス決済の競争激化が経営統合へ与えた影響について、出澤社長は「個別の事象というよりも、全体の戦いの中で大きな手を打つべきというのが率直な気持ち。パーツの1つとして(キャッシュレス決済の)競争激化はあるが、それはトリガーでではない」と主張したが、統合の中身を見れば本音とは受け取れない。
「対等の精神」を強調するも実質は
LINEのソフトバンクグループ入り
今回の会見で繰り返し強調されたのは「対等の精神」という言葉だ。統合に伴うハレーションを抑え込みたいのだろう。「実はLINEのサービスが大好きで、ヘビーユーザー」と持ち上げるなど、川邊社長は会見の随所でLINEに配慮するかのような言葉を連発した。
だが企業の規模では圧倒的にヤフーの方が大きい。直近1年間の決算では、ZHD(19年3月期)は売上高9547億円、純利益786億円に対し、LINE(18年12月期)は売上高2071億円、純損失37億円と赤字だ。
統合後のZHDでは、川邊社長と出澤社長の両者が「共同CEO」に就任するとはいえ、統合後の社長と共同CEOを兼任するのは川邊氏だけだ。LINEはソフトバンクの連結子会社になり、実質的にLINEはソフトバンクグループに飲み込まれることになる。
出澤社長は「川邊氏を始めZHDの経営陣と深い議論をしたので心配していない。LINEらしいものづくりを一緒にやっていこうと共感をいただいて今日に至った」と説明。ただ、統合後の両社の各種サービスの在り方について、「統合完了後に話し合う」と両社長は明言を避けた。
対等の精神という言葉は美しい。しかし、統合の過程では両社のサービスをシビアに判断し、取捨選択が必要となってくる。とりわけ“営業力”が自慢のソフトバンク傘下のヤフーは、検索や広告という共通基盤の上に、ショッピングなどのサービスを展開してアプリの収益化に成功している。
一方のLINEは、8200万人の顧客基盤を抱えながらも広告やゲームを除けばマネタイズに手をこまねいているように見える。LINEのメッセージアプリ以外のサービスは、マネタイズに長けたソフトバンクグループのものに寄せられていく可能性が高い。サービスの整理に伴う、衝突を避けられない泥くさい作業をいかにスピーディーに進められるかが、統合の成否を握っている。