「企画プレゼンが通らない」「営業先の反応が弱い」「プレゼン資料の作成に時間がかかる…」など、プレゼンに関する悩みは尽きません。そんなビジネスパーソンの悩みに応えて、累計25万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』シリーズの最新刊『プレゼン資料のデザイン図鑑』が発売になりました。この連載では、同書のコンテンツを紹介しながら、著者・前田鎌利氏がソフトバンク在籍時に孫正義社長から何度も「一発OK」を勝ち取り、ソフトバンク、ヤフーをはじめ約600社に採用された「最強のプレゼン資料作成術」のエッセンスをお伝えします。

「プレゼンの採択率」の高い人が実践している“超シンプル”なコツPhoto: Adobe Stock

「社内プレゼンで何度も差し戻される……」「企画プレゼンが通らない……」

 このような悩みをもっているビジネス・パーソンから相談を受けたときに、いつもお伝えしている「採択率を確実に上げる方法」があります。「2案」を提案する方法です。課題解決のために考え尽くした人は、1つのアイデアにすべてを賭けたい気持ちになるものですが、あえて「A案」「B案」の2案を提示するのです。

 なぜなら、人間というものは、選択肢が1つしかないと、「もっといいモノがあるかもしれない」と考える傾向があるからです。逆に、選択肢を示すと、そのなかから「よりよいモノを選ぼう」という思考が働きます。その結果、意思決定がポジティブな方向に働くことが多いのです。

「プレゼンの採択率」の高い人が実践している“超シンプル”なコツ

   また、1案だけではなく2案示すことによって、徹底的に考え抜いた提案であることをアピールする効果があるうえに、意思決定者が2案のうちの一方を選択した場合、そこには自発性がありますから、採択後のコミットメントにも差が生まれることが多いのです。

 たとえば、このスライドをご覧ください。

「プレゼンの採択率」の高い人が実践している“超シンプル”なコツ

  これは、販売不振に陥っている「レイクサイド店」の改善策のサマリーを示すスライドです。「単価1000円の高級和菓子」を投入してテコ入れを図る提案を行っていますが、選択肢がひとつしかないため、意思決定者に「もっといいアイデアがあるのでは?」と思われるおそれがあります。

 そこで、次のようにスライドを展開していくことで、効果的に2案を提示してポジティブな意思決定に導くように改善します。

 まず、次のようなサマリー・スライドを示しながら、「A案」「B案」の2案を検討していることを伝えます。

「プレゼンの採択率」の高い人が実践している“超シンプル”なコツ

 そのうえで、次のようなスライドを示しながら、「A案」「B案」の詳細を説明します。ここで重要なのは、それぞれのメリット・デメリットを明確に伝えることです。

「プレゼンの採択率」の高い人が実践している“超シンプル”なコツ

 そして、次のスライドのように自分が推奨する案を赤枠で囲ったうえで、「なぜ、この案を推奨するか」を説明します。たとえば、「両案ともお客様を惹きつけるアイデアではありますが、業績の早期回復が求められている現在、よりスピーディに実現可能なA案を採用すべきだと考えます」などと訴えれば、意思決定者が納得する可能性は高いでしょう。

 ただし、2案を提示する際には注意していただきたことがあります。

 まず第一に、方向性の異なる2案を提示してはなりません。

 たとえば、店舗売上を上げるために「新規商品の投入」と「店舗の改装」の2案を提案するようなプレゼンはNGです。双方がまったく異なる方向性をもっているため、意思決定者は「もっと、煮詰めた提案をもってくるべき」と判断して、差し戻しになる可能性が高くなるでしょう。

 ですから、2案を提案するときには、必ず、方向性は同じだけど細部に違いのある案を提示してください。上記の「レイクサイド店」の売上改善提案でも、「高級和菓子」と「おもちゃ付き菓子」という2案は「新規商品の投入」という同じ方向性をもつ提案にしています。このような提案にしておけば、万一、2案とも否決され、再提案する必要が生じても、「新規商品の投入を行う」ことについての承認を得ておけば、採択に向けて一歩進んだことになります。

 第2に、練りに練った2案を提示することです。「2案示せばいいんでしょ?」という感覚で、適当につくった案を”かませ犬”のように盛り込むのは逆効果です。意思決定者はムダな投資を避けるために、厳しい視線で提案を吟味しますから、根拠薄弱な提案を鋭く見抜きます。そして、一度、「いい加減な提案をする社員」という印象をもたれると、その後のプレゼンにも大きな悪影響を与えてしまうでしょう。この点は、十分に気をつけてください。