日本航空(JAL)が設立したLCC(ローコストキャリア、格安航空)のZIPAIR Tokyo(ジップエア)が、米国のハワイ・ホノルルとポートランドを最有力候補として検討していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
ホノルル検討の背景には
JALとハワイアンの提携問題
日本航空(JAL)が設立したLCC(ローコストキャリア、格安航空)のZIPAIR Tokyo(ジップエア)が、国際基準を満たした後の就航先に、米国のハワイ・ホノルルとポートランドを最有力候補として検討していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
ジップエアは18年5月、JALが「国際線中長距離を飛ぶ日本初のLCC」を表明したことにより、7月にJAL100%出資子会社として設立(当時は準備会社で別の社名)。一般的にLCCは短距離(4時間圏内)運航を基本とするが、その過程をすっ飛ばして最初から中長距離(最長10時間程度)を標榜した。「ANAに出遅れ気味のLCCで“一足飛び”で巻き返しを図る作戦だ」と航空業界関係者はにらむ。
ところが、19年3月に新社名と共に発表した第1弾就航先はタイのバンコク(20年5月運航開始)と韓国のソウル(同7月)で、短・中距離だった。使用する飛行機(ボーイング787-8)の航続距離としては欧米に飛べるものの、洋上飛行を行うにはETOPSという国際基準を満たす必要があり、運航実績を積まなければいけない。そこでまず需要の多いバンコク、そして機材稼働の観点から中距離に短距離を組み合わせるためソウルを選定した。
初便に向けた運航の準備を進めると共に、「本命」の太平洋路線の選定も並行して行っている。その中で浮上したのが、親会社JALと米ハワイアン航空の共同事業(ジョイントベンチャー、JV)認可問題である。
5月末、ANAはエアバスの超大型機A380をホノルル線に投入し、JALの“牙城”であるハワイ市場の切り崩しにかかった。現状、ANAの集客は好調で、日本~ハワイ市場の需給バランスは大きく変化している。
JALの対抗策が、地元の老舗ハワイアン航空とJVを行い、供給量の拡充を図ること。航空会社の提携戦略はインターライン契約(互いの航空券発券+バゲージスルーサービスなど)から始まり、コードシェアやマイレージでの提携、そしてJVへと進む。
コードシェアのメリットは、自社の飛行機や乗員を使わず、相乗りすることで路線網を広げられること。あるいは自社だけでは売り切れない航空券を相手が売ってくれることだ。それをさらに発展させたのがJVで、独占禁止法適用除外(ATI)を得た上で、運賃やスケジュールを調整し、それぞれの収入を一緒にした後、条件に応じてシェアする。
このJV、順調に事が運ばなかった。JALとハワイアンが米国運輸省にATIを申請したものの、10月初旬、米運輸省は両社のATIを認め難いという判断を下したのである。「ネットワークの広がりや乗り継ぎを含めたスケジュール、運賃など(ATI取得により)旅客にどれだけメリットをもたらせるかについての説明が、言葉足らずだった」とJAL幹部。そこでJALとハワイアンは再度、申請を行った。
その内容は、ジップエアもJVに加わることで、顧客ニーズに合ったサービスと運賃を提供できるというものだ。現在、東京~ハワイ路線でLCCは就航しておらず、LCCという新たな選択肢をJVに加えることで、また、日本~ハワイ間の供給量をJALグループとして増やすことで、顧客利便性が向上するとJALは主張する。
一方、ジップエア側は「ハワイは元々、候補地として有力だった。JALとハワイアンの連携に、我々もジョインすることが良いと考えている」(同社首脳)。
こうした流れで米国路線としてホノルル就航がまず固まろうとしている。