米国西海岸の就航先で
ポートランド最有力の理由

 ジップエアは設立当初から「太平洋線は外資系フルサービスキャリアが競争相手になる」との見解を持ち、「ネットワーク構築にあたってはJALからの移管路線ではなく、独自の戦略をもって、新しい顧客を開拓したい」と意気込んできた。

 狙いは米国西海岸。日本人の観光や、アジアのVFR(友人や親せきの訪問)需要を捉えた就航地、その上で混雑空港ではなく、LCCの集積空港であることが選択におけるポイントだ。LCCビジネスの根幹である機材稼働率を最大化するためには混雑空港に就航していると遅延の原因になり不利になる。LCCの集積空港であれば手本がいるし、空港側のノウハウも長けている。

 常道ならロサンゼルスやサンフランシスコであるが、ロサンゼルスは20年春の羽田国際線増枠を経て、ANA、JAL、米デルタ航空、米アメリカン航空、米ユナイテッド航空が羽田から便を持つことになる。

 そうした判断から最有力となっているのがポートランドだ。日本からの直行便はデルタのみ(現在は成田~ポートランドで、20年3月29日以降は羽田~ポートランド、デルタの単独路線)。

 ポートランドの魅力は、しゃれたレストランや最先端のセレクトショップがあるなど都市型観光に加えて、大自然が身近にあることだ。北西部のビーチは米国人にも人気で、米国で「住みたい街ランキング」でもたびたび上位に取り上げられる。しかも、ポートランドのあるオレゴン州は消費税が「0%」である。

 また、「全米で最も創造的な街」と評される。米インテルを中心に1000社を超えるハイテク企業が集積し、「シリコン・フォレスト」とも呼ばれているからだ。スポーツウェアのナイキとコロンビアの本社があることでも知られる。

 ポートランド国際空港は米旅行雑誌「Travel + Leisure Magazine」の「米国で最も快適な空港」の1位を獲得してもいる。米LCCサウスウェスト航空の拠点空港の一つであり、JALのパートナー、アラスカ航空もハブの一つにしている空港だ。航空会社が新規拠点に就航する際、現地のグランドハンドリング体制を構築するにあたって、パートナーは頼りになる存在だ。