フルサービスキャリアの半額で
羽田発のデルタと棲み分けられるか

 ジップエアの787-8の席数は290席と、JALが国際線で運用する同型機の席数より4~5割増えている。それでも他社のLCCに比べれば、長いフライトに適した余裕のあるシート。エコノミーだけではなく、上級クラスも設定する。

 運航開始まで半年を切った現在、着々と準備は進んでいる。パイロットは元JALのOBを含め、他社キャリアからの移籍もあり、初年度運航に必要な30人超を確保。客室乗務員にも多数の応募があり、西田真吾社長自らほぼ全ての面接に立ち会って選考に携わった。120人超の客室乗務員のうち外国人も10人以上採用するなど、訪日客へのサービス対応も整えている。また、ファミリー層も意識した、従来のLCCにはない新しいおもてなしのスタイルを提供できるよう、客室乗務員自らが知恵を出し合っているという。

 気になる運賃はフルサービスキャリアの半額を目指している。羽田発のデルタに対して、成田発のジップエアは価格で訴求し、棲み分けを図ると見られる。

 11月19日、ANAとJALは揃って20年春以降の羽田新路線を発表した。両社とも羽田と成田の役割を分けることで、新たな路線網を敷く。羽田は首都圏の業務渡航需要をベースに、国内線網を活用した地方客の誘客も想定。一方、成田はアジアと北米をつなぐハブ機能を強化し、新路線の開拓や、傘下LCCの拠点空港として新しいビジネスモデルを模索するという。加えてどちらも訪日客需要も意識する。

 そもそもJALがジップエアを立ち上げた狙いの一つに、JALが主要な国際線を羽田へ集約するにあたり、空いた成田の発着枠を活用するモデルが求められる。そこに自前LCCが当てはまった。

 加えてこの11月、豪カンタス航空との合弁会社であるLCC、ジェットスター・ジャパンへの出資比率を、33%から50%に引き上げた。JALとジェットスター・ジャパンは現在、JAL国際線×ジェットスター・ジャパン国内線の乗り継ぎのみでコードシェアを行うが、対象範囲の拡大も検討している。

 ANAも同様に、米国行きの稼げる路線を羽田へ移す一方、傘下LCCバニラエアをピーチ・アビエーションに統合し(11月1日完了)、成田を拠点としたLCCのパワーアップを図った。

 デルタは成田から撤退するが、成田は依然としてANAとJAL両グループにおける拠点空港であり、足元では中国キャリアの新規就航が大幅に増えている。11月7日、第3滑走路の建設に向けた変更申請書を国に提出。羽田と同じ年間発着枠50万回獲得に向けて動き出した。

 羽田と成田、双方が「首都圏の玄関口」として威力を発揮することが、国が掲げる訪日客2030年6000万人の達成に向けたベースになることは間違いない。