「ワインを飲むと自信が沸く」を脳科学的に分析する

渡辺 レクチャーした若いビジネスパーソンから、「高いワインを飲んだら、なんだか自信が湧いてきた。ビジネスアイデアもどんどん生まれてくるんだ」という声をもらうことがよくあります。脳科学の観点から見ると、ワインを飲んだ人にどのような変化が起こっているのでしょうか。

中野 これは非常に深いテーマです。もちろん「ワインにはアルコールが含まれている」という前提でお話ししますね。

 おそらくワインに「格付け」があることが大きいのではないでしょうか。ワインには格付けがありますが、人間の脳は比較することなしに何かを測ることができません。慎重な人ほど安全策を取ろうとして自分の価値を低めに見積もる傾向がある一方、イグノーベル賞を取ったある研究によれば、あるテストの点数の低い人ほど自分の実力を実際より高く見積もるということが明らかにされました。なかなか自分の実力を正確に見積もることができないということが示されたわけです。

 では、自分の実力はわからなくとも他人の実力なら正確に見積もることができるのかというと、これもまた難しく、各企業の人事担当者が苦労している通りではないかと思います。

 つまり人間は、人間の価値がよくわからない。だからこそ、「他者がきちっと評価できるものを身につけることによって自信が湧く」ことが人間にはよく起こるんです。オーダーメイドのスーツを着たり、ハイブランドのドレスを着たり、高価な時計を身につけたりすると、いつもの自分とは違う感覚が得られますよね。自信が湧いてきて、それらを身につけるのがふさわしい人間であるように多くの人は振る舞います。ましてやワインは、体の中に直接入るものです。より「自分が変わる」感覚を得られるのかもしれません。その感覚が、いつも「自信がないな」と思っていた自分のブレーキを外した。だから自信が湧き、今まで無意識に抑え込んでいたアイデアもどんどん出てきたのでしょうね。

高いワインはなぜ、飲んだ人に自信をもたらすのか?中野信子/脳科学者、医学博士、認知科学者としてメディアでも人気の中野信子氏。東京大学工学部応用化学卒業後、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。現在、脳や心理をテーマに研究や執筆を行っている。

渡辺 なるほど。確かにワインは格付けがはっきりしていますし、値段も目安になりますものね。しかも「体に直接入れるもの」という特性が、スーツやドレス、時計より高い効果をもたらしているとは「おっしゃる通り」と膝を打ちました。

中野 ワインを飲んだときに得られる効果は「3C」にまとめられそうですね。「Concentration(集中)」「Creativity(創造性)」「Communication(コミュニケーション)」の3つで、「3C」。いずれもビジネスに直結するスキルですよね。ワインとビジネスの親和性が高いのは、ここにも大きな理由があるのではないでしょうか。そのために、ワインを飲むと「自分は仕事ができる」という自信が湧いてきて、いろいろな能力が開放されるのだと思います。……ところでこの「3C」、私の考えをいま初めて公にするものですが、面白いと思ってくださってもし他でお使いになりたいとおもわれたときにはぜひ「中野」のクレジットを入れてくださいね(笑)。