実はエンジニアだった僕の父親が、定年後に嘱託社員として5年間働いたあとに退職したんです。
現役時代は子会社に出向して、いわゆる「出世コース」からは外れて生きてきた人なんですけど、最後に選んだ職場が、内部監査の部署だったんですね。そこでの務めを終えた最後の日に、送別会をしてもらった時、父が挨拶で「ここでみなさんと働いた5年間が、今までの人生で一番楽しかったです」と話したそうなんです。それって、めっちゃいい話だなと思って。
大企業の中では勝てなかったけど、自分が求めていたものはそれじゃなかったことに気づいた、っていうことだと思うんですよね。なぜ父がその話をしたかというと、これも「オープネス」につながる話なんですよ。細かいところによく気がつく几帳面な性格を「自己開示」して、自分の才能を発揮したことで、すごく周りから頼りにされるようになったんです。
会議を5分早く終わらせるところから始めよう
――すごくいい話ですね。北野さんのお父様の場合は部署異動がたまたまそのきっかけになったわけですが、一人のメンバーの立場から、自分の組織を少しでも働きやすくするにはどうしたらいいでしょうか。
閉塞感が強い会社を手っ取り早く改革したいなら、トップを変えるのが一番早いんですよ。本にも書きましたが、マイクロソフトがV字回復したのも、3代目のCEOにサティア・ナデラ氏を迎えたからです。でも、すぐに経営者を交代できないのであれば、現場のリーダーが変わるしかない。180度変われなくても、できることから変えていけばいいんです。トヨタ自動車も、1%の改善を続けることで勝ち続けることができるようなったわけですから。
――1%だったら誰でもできそうですね。
たとえば現場メンバーでも、60分の会議を55分で終わらせるくらいのことはできますよね。
あるいは、中間管理職であれば、自分のチームメンバーに対して1週間に1回だけでもいいから、楽しいことをやるとか。
僕も、博報堂に勤めていた頃、経理財務グループで働いていたことがあって、周りのメンバーに日頃の感謝を伝えるつもりで小さなチョコレートを配ったりしていました。それも自己開示のひとつで、相手に気持ち良く働いてもらうための知恵でもあるんですよね。それほど難しいことではなくていいので、今日から実践してみてほしいです。