「マヌケ」という言葉は、「バカ」と混同されがちだけど、「マヌケ」という言葉を使っていたら人間関係も仕事関係も良くなっていくし、マヌケであればあるほど運はたまっていくよ!
そんな、欽ちゃんのあったかい言葉が詰まった本『マヌケのすすめ』が、発売になりました。この連載では『マヌケのすすめ』から、とくに心に響く部分を抜粋して、萩本欽一さんの言葉を紹介していきます。(撮影/榊智朗)

他人の得を自分の得と思えるのがマヌケの特徴

 「マヌケだと損しちゃいそうだな……」って心配になる人は、マヌケ向きじゃない。
 たしかに、マヌケは目先の得は逃しがちなんだけど、ぜんぜん大丈夫。
 たいてい、あとからもっと大きな得がやってくるから。そもそも、得を逃したことにも気がつかない。

 たとえば、行列ができているラーメン屋さんに行って、ずっと並んでたら、お店の人に「はい、この人で終わりになります」と言われることがあるよね。
 自分が最後のひとりになっちゃう。
 マヌケな人っていうのは、ここで「うわ、ラッキー」とは思わない。得して喜ぶのはマヌケ道に反してます。

 そういう状況で、後ろから「なんだよ」なんて怒ってる声が聞こえると、さすがのマヌケも振り向かない。
 自分が悪いわけじゃないのに、自分が責められているみたいに思っちゃうから。
 だけど、後ろがシーンとしていると、気になってつい振り向いちゃう。

 すると、いい感じの女の人が立っているわけですよ。
 残念そうに、ちょっとうつむいて黙って立ってる。こうなったら、もうダメ。
 ふだん女の人に声なんかかけたことないのに、つい言っちゃいます。
 「あの、よかったらぼくの代わりにどうぞ」なんて。
 しょんぼりしている人を見ると、居たたまれなくなってワタワタしちゃう。

 こういう行動をするのがマヌケ。
 そこで後ろめたい思いをしながら食べるより、しょんぼりしている人に譲ってあげたほうが、もっとおいしい気持ちになれるんですよ。
 本人は特別いいことをしているつもりはなくて、そうせずにいられない。他人の得を自分の得と思えるのがマヌケの特徴。
 だから、マヌケってまわりに好かれる人が多いよね。

 それで、後ろの女の人が同じようにマヌケなタイプだと、「いえ、そんな、私はいいです」 なんてモジモジしちゃう。
 譲り合っているうちに、もうひとつ後ろに並んでいたマヌケじゃない人が「じゃあ、俺が行く」なんて。

 でも、マヌケなふたりにとっては、そのほうが気が楽なの。
 ふたりで顔を見合わせて、ニッコリ笑って「お茶でも飲みましょうか」ってことに必ずなるよ。
 もちろん、下心なんかじゃない。
 慰めの言葉のひとつもかけなきゃって、お互いに思うから。
 こういうふたりは、きっとその後もうまくいくね。
 自分が最後の一杯のラーメンを食べちゃったらそれまでだけど、ほら、マヌケのおかげでもっといいことがあったでしょ。

(本原稿は、萩本欽一著『マヌケのすすめ』からの抜粋です)
*撮影協力/駒澤大学