勉強を通して、社会に出たあとも役立つ「生きる力」を身につける

 私は幼少期の10年間、父親の仕事の都合でスペインのマドリッドで過ごしました。スペイン人の生活は、まさにサッカーを中心にまわっているような状況でした。私の家のそばにもサッカー場があり、私自身、サッカーまみれで育ちました。

 そのため、今は学習塾経営の傍ら、日本サッカー協会の公認仲介人として、Jリーグのプロサッカー選手の育成やマネジメントにも携わっています。

 そんな私が中学生のときにスペインから帰国し、まず感じたことは、日本の教育の素晴らしさでした。日本人は子どもも含めて礼儀正しく、ほとんどの人が読み書きができます。そんなことは、スペインではあり得ませんでした。

 ただ、日本人がすぐに自分を卑下するところや、自分で判断できないところ、主体的に考えようとしないところは残念に思われました。

 この十数年、日本では幼児教育の大切さが注目され、多くの子どもが幼い頃から学習塾に通っています。しかし多くの学習塾では、受験に合格するテクニックだけを子どもたちに与え、社会に出てから通用する力は身につけさせようとしません。

 たとえば、共通の勉強のカリキュラムが決められ、子どもたちはそれを必死にこなすことを求められます。その子に合わせたカリキュラムではないので、当然、そこから振り落とされる子が出てきます。

 また、これは塾側が用意するフォーマットですから、言い方は悪いですが、子どもたちはロボットのようになって、そのフォーマットどおりこなすことが求められます。

 しかし、これでは単に試験だけに強い、非力な受験エリートになってしまいます。

 ほとんどの親は、自分の子どもたちに、自分で考え、自分で人生を切り拓ける子になってほしいと望んでいるはずです。指示待ち人間ではなく、主体的に考え、行動できる人になってほしいはずです。

 私の学習法では、子どものレベルに合わせてカリキュラムをつくったり、暗記の方法を子ども自身に選ばせたり、2割の自習時間でなにをするかを生徒に考えさせたりと、勉強しながら自主性を伸ばしたり、考える力や決断力を養うことを常に意識しています。

 ちなみに、プロサッカー選手の育成は、基本的に学習塾での育成方法と同じ考え方で実践していますが、スポーツと勉強には共通するところが多くあります。

 トレーニングメニューを決め、技術を習得し、ゲームの中での動きを理解していくことは、勉強の「わかる」メカニズムと同じです。

 ワンパターンの暗記学習だけでは複雑な局面に対応できませんし、複雑なゲーム運びを理解し、実践するためには、正確なキックやトラップという基礎力が必要となります。そうした基礎力を有機的につなげるコツがあるのです。

 おかげさまで、学習塾だけでなく、サッカー選手からの評判も上々で、新規の依頼も多くいただいています。