今、日本では空前のサウナブームが起きています。
 芸能人や著名な経営者にも「サウナ好き」を公言する方が増え、また身近なビジネスパーソンで、精力的に仕事をこなすトップエリートと呼ばれる男女がこぞってサウナに通っています。なぜ、仕事ができる人は、サウナにハマるのでしょうか?
 サウナを初めて科学的エビデンスに基づいて解説した話題の書「医者が教えるサウナの教科書」(加藤容崇著)より、最新研究に基づいたサウナの脳と体に与える効果と、ビジネスのパフォーマンスを最大化する入り方を、抜粋して紹介していきます。

【サウナの科学】<br />サウナ室を出る目安は<br />汗の量を基準に<br />してはいけないPhoto: Adobe Stock

 サウナ室を出る目安として、気を付けなくてはいけないのは、汗の量で判断しないということです。
 たしかに、汗がたっぷり出ると、「体が熱くなっている! そろそろ出よう」と思いますよね。しかし、実は、それは汗ではなく、結露の可能性があります。

 たとえば、冷たい飲み物が入ったグラスを放置しておくと、汗をかいたように表面に水滴がつくことがあります。コップに入れた冷たい飲み物によってコップ周辺の空気が冷やされると、空気が抱え込める水蒸気量が減少するため、液化します。その結果、空気中に含まれていた水が、水滴としてコップに付着します。

 これと同じことが、サウナに入っている人間にも起きているのです。サウナ室、特に湿度が高いフィンランド式サウナの場合、サウナと比べて人体は非常に温度が低いため、人間の皮膚表面に結露が生じます。

 したがって、顔から汗がダラダラ流れ落ちてきたとしても、結露の水分も含まれているため、騙されてはいけません。汗の量(汗と思われる量)を指標にしてはいけないのです。

体感を目安にするなら、背中の真ん中が温まった時

 手や顔が熱くなってくると、「全身が温まった」と思うかもしれませんが、実はそれは誤りです。
 人間が感覚を得るために持っているセンサーは、手と顔が最も敏感です。脳にある感覚野の領域も、手と顔が多くの領域を占めています。
 そのため、特に遠赤外線ヒーターがあるサウナの場合、ヒーターが当たる体の前面である手や顔が最も熱くなります。けれども、実際にはそれ以外の部分はまだ熱くなっていません。 もし、全身が温まったかどうかを大まかにチェックするなら、手や顔ではなく、背中の真ん中のあたりに意識を集中してみてください。

 実はここは、深部体温をセンサーできる場所なのです。
 背中の真ん中あたりというのは、言い換えると、「風邪を引いた時に悪寒がするところ」です。そもそも、風邪を引いた時に背中がブルっとするのは、脳が設定しているセットポイント(体の健康を守るために設定された温度)が関係しています。
 風邪を引くと、脳がセットポイントを上げます。いつもは36〜37度くらいなのがウィルスを退治するために38〜39度くらいに変更されるということです。すると、脳は現在の体温が、セットポイントに達しているかを測るため、センサーを働かせます。そのセンサーが、背中の真ん中あたりにあります。そして、その時に体温がセットポイントに達していないと、ブルっと悪寒がするというわけです。

 もし、「顔が熱くて耐えられない」という場合は、濡れタオルで顔を覆ってみてください。タオルは、水で絞ってもお湯で絞っても、どちらでもかまいません。こんなに違うのかというくらい温度の感じ方が変わります。もう一つ裏技として、ヒーターに背を向けて座るというのもアリです。そうすると、体の背面もしっかり温めることができます。

 いずれにしても、無理はせず、体調が悪くなったと感じた時にはすぐに出るようにしてください。