儲かる農業 攻める企業#10
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農業の世界にもダイバーシティーの時代が到来した。農業の常識にとらわれない非農家出身者や、あえて規模を拡大しない道を選んだ中小規模の農家が、独自のこだわりや経営手法で利益を上げている。特集『儲かる農業 攻める企業』(全17回)の#10では、小粒でもキラリと光る農家に稼ぐ秘訣を教えてもらった。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子、千本木啓文)

非農家出身、まだ就農5年目なのに
失敗したことがない!

 京都府亀岡市に「失敗しない」農家がいる。人気医療ドラマに登場する女医の話ではない。就農5年目の若手経営者、小島敬久さん(32歳)のことだ。

 天変地異や農産物の市況、小売り・外食企業の浮沈──。今回の新型コロナウイルスも農業界に甚大な影響を及ぼしているが、脆弱な中小農家の経営は、ただでさえ外部環境に左右されやすい。小島さんが「失敗しない」経営を実践できるのはなぜだろうか。その秘密を解き明かしてみよう。

 小島さんは「養液栽培」という珍しい手法を採用している。肥料を水に溶かした培養液で農産物を栽培する方式で、その中でも培地を使わないものが水耕栽培だ。

小島敬久
新規就農5年目にして、「失敗しない」経営を実践する小島さん。理論に偏らない柔軟性が強みだ Photo by Fusako Asashima

 明治大学農学部、韓国ソウル大学大学院で養液栽培について徹底的に学んだと聞けば、小島さんが理論先行タイプの経営者に見えるかもしれない。だが小島さんの魅力は、理論に偏ることなく臨機応変に考えや対応を改められる、その柔軟性にある。

 農家になってから、一度だけ大きな壁にぶつかった。新規就農センターの窓口に、水耕栽培を始めるための経営計画を持参し、相談に行ったときのことだ。ハウスやシステムの導入に3400万円もの初期投資を要する計画に、職員から猛反発を食らったのだ。

 小島さんは「農業経験のない非農家出身、前例のない栽培法、前例のない投資規模、初めて尽くしだったので無謀な計画に見えたのでしょう」と振り返る。

 水耕栽培でホウレンソウを周年で作る計画だったが、職員は「夏場にホウレンソウができるはずがない。計画を見直すように」の一点張り。水耕栽培に熟知した職員などおらずらちが明かない。

 そこで小島さんは一計を案じた。