有力農家や企業がこぞって静岡県で農業に参入している。なぜ、野心的な農家が集まるのか。特集『儲かる農業 攻める企業』(全17回)の#16では、「静岡を制する者は農業を制す」といわれるほど、競争が激化している理由に迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
気候は一等地だが、工場との人材争奪戦は苛烈
静岡県に、他のエリアに本拠を構える有力農家が殺到している。
ダイヤモンド編集部が選定した「レジェンド農家ベスト20」(本特集#2『売上高17億円、ワールドファームに見る「レジェンド農家」の必須条件』参照)の中だけで、京都府のこと京都(→藤枝市)、長野県のトップリバー(→浜松市、磐田市)、愛媛県の楽天農業(→伊豆の国市)などが進出している。
さらに「カリスマ農家」ナンバーワンに輝いた野菜くらぶの澤浦彰治さん(本特集#5『カリスマ農家No.1が明かす、日本の農業の「不都合な真実」』参照)も、モスバーガー向けにトマトを作る会社を菊川市で経営する。
これだけそうそうたる農家が集まれば、静岡県が農業の“トップリーグ”といわれるのもうなずける。
一方で、静岡県は、本編集部が47都道府県の行政による農業振興の積極性や実績を評価して作成した「農業が『伸びる県・沈む県』ランキング」で42位と決して高くはない(特集『農業激変 JA大淘汰』の#8『農業が「伸びる県・沈む県」ランキング、自治体行政マン・農政課必見!』参照)。自治体の支援が充実しているとはいえない。
にもかかわらず、静岡県が有力農家を引き付けるのはなぜか――。その理由は大きく二つある。